2014 Fiscal Year Research-status Report
相空間を用いた身体動作の特徴抽出と運転動作解析への応用
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25870855
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
秋月 拓磨 山梨英和大学, 人間文化学部, 助教 (40632922)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソフトコンピューティング / 機械力学・制御 / 身体動作解析 / アトラクタ |
Outline of Annual Research Achievements |
身体動作の時系列データを相空間上に展開し,形成されるアトラクタを用いて動作の類似性を評価する方法を提案した.従来の行動センシングの研究では,身体動作の空間的な変動(振幅やその分散の変化)に着目し,それらの統計的なモデルをつくることで動作を認識したり個人を識別したりする方法が議論されていた.これに対して本研究では,身体各部の協調動作の様子をデータの位相差と振幅変化のパターンとして表現し,それを力学系理論におけるアトラクタの一種とみなしてモデル化する.さらに,モデルの係数を特徴量とした空間(記号空間)を定義し,この空間内で動作の類似性を議論できることを明らかにした.昨年度は,振り子モデルを上肢の腕ふり運動にみたてて,粘性摩擦係数を身体差(関節の柔軟性),腕の長さを運動差(腕の動かし方の違い;腕の曲げ伸ばし状態),として対応づけて考えるとともに,記号空間でこれらの違いを判別できることを確認した.その一方で,検証に用いた振り子モデル(単振り子)と実際の身体動作とでは,運動の自由度が大きく異なる.そこで本年度は,解析の対象動作を拡大することをねらいとして,歩行動作を対象とした解析により,提案手法の有用性を検証した.検証には単純な受動歩行モデル(コンパスモデル)から生成した時系列データに,ガウスノイズを加えたものを用いた.コンパスモデルは二本の剛体棒とそれらを固定するピンからなり,このモデルに初速度など適切な初期入力を与えると緩やかな斜面上を二足歩行で歩き下るようすを再現できる.このとき,初期入力を与えてからある一定の歩行周期(リミットサイクル)に収束するまでの様子,また斜面角度によって歩行周期(リミットサイクルの概形)が変化する様子をそれぞれ,記号空間上で判別できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,平成25年度に引き続き提案するアトラクタ解析法について,大きく以下の4項目を実施した.1)アトラクタ解析法の基本検討事項の調査およびアルゴリズム考案,2)1)に基づいた解析コードの開発と妥当性評価,3)受動歩行モデルから生成した時系列データの動作判別実験,4)実際の動作への適用にむけた運動時系列の次元削減手法の検討.以上の実施結果から,アトラクタを用いたデータ解析法について,解析行程のもっとも基礎となる部分を固めることができ,実データへの適用にむけた足がかりを構築できた.これらの成果については,国際会議ICICIC2014,および第57回自動制御連合講演会などにて公表された.以上のことから,研究目的の達成にむけて,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度,および平成26年度の成果を受けて,アトラクタ解析法の拡張をすすめるとともに,実データを用いた応用検証をめざす. (1)前年度から準備をすすめているドライビングシミュレータ(DS)を利用した運転動作計測実験を実施する.運転動作のスタイルを一意に定義することは難しいが,安全運転を心がける人であれば,経験を重ねるごとに危険な動作や無駄な動作を排除するよう動作の改善がすすむと考えられる.そこで,各被験者にはDS上のコースを複数回運転してもらい,習熟の過程をビデオ,およびモーションセンサで記録する.(2)解析対象の動作データから相空間の構成変数を自動選択する方法を検証する.人の身体動作は膨大な自由度の筋骨格系から生成されるが,実際にはシナジーとよばれる関節間の協調構造によって自由度を減らしていることが知られている.そこで,主成分分析(PCA)を用いてモデルの変数をデータから自動選択する方法を検討する.以上の検証は,実データへの適用にむけた準備として年度の前半におこなう.(3)アトラクタ解析法およびクラスタリングを用いた身体動作データの解析法を検討する.具体的には,アトラクタ解析法によってデータからモデル係数を求めた後,係数間距離が定義された空間内に対して種々のクラスタリング手法を適用することで動作解析を行う.また,空間内での係数の配置や分布を評価することで個人識別を行うとともに,各軸の大きさを因子分析して個人性の主因子を明らかにする.検証には,年度前半で収集した運転動作データを用いる.また,本年度は本研究の最終年度に当たる.研究結果を総括して広く公表するよう取り組むとともに,今までに得られた結果や問題点,その解決策についても国内外の学術会議にて発表をする.
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Causes of Carryover |
平成25年度に導入を計画していた身体動作の計測設備(モーションセンサおよびデータ同期記録・保管装置)について,機材構成を一部変更したことが次年度使用額の生じたおもな主な理由である.また,この変更は技術検証を目的として,機材一式のうち一部を試験的に先行導入したことで生じた.技術検証そのものは研究計画の進捗に影響を与えることはなく,検証結果,および実施計画に基づき計測設備の導入をすすめた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に引き続き,本年度に予定している運転動作データの収集実験に必要な消耗品,および実験被験者謝金や実験補助等の人件費・謝金を予定している.その他に国際会議への参加・発表等,研究発表および打合せのための旅費,現在準備中の論文の投稿費や出版費を予定している.
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Remarks |
2015年4月より所属機関が異動となった.
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