2013 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブによるワインドアップ式機械的エネルギーの貯蔵研究
Project/Area Number |
25870856
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science, Suwa |
Principal Investigator |
内海 重宜 諏訪東京理科大学, システム工学部, 准教授 (00454257)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ナノカーボン / 機械的エネルギー貯蔵 / 貯蔵重量エネルギー密度 |
Research Abstract |
本研究の目的は,カーボンナノチューブ(CNT)を捻じることで,どれくらいの重量エネルギー密度(MJ/kg)が貯蔵できるかを実験的に求めることである。本目的達成のため,(1)ひも状の捻じり試験用ナノカーボン試料を作製し,(2)引張力とトルクを高い精度と再現性で測定可能な装置を構築し,(3)捻じり角と引っ張り力およびトルクの関係から,貯蔵された重量エネルギー密度を計算することが必要となる。平成25年度は(2)の測定装置の構築を完了させ(1)(3)については,CNTのモデル物質としてカーボンファイバー(CF)およびバルク体としてハンドリングの容易な酸化グラフェン(GO)試料を試作し測定を行った。 卓上引張試験機をもとに,試料上部にフォースゲージ,下部に特殊な治具を製作しデジタルトルクメータを取り付けた。試料つかみ部には三点チャックを採用し,測定中に試料の捻じりが戻らないように回転部分にはラチェットを取り付けた。 測定試料には,CFおよびGO試料を用いた。試料を捻った回数とその時に生じるトルクおよび引張力を測定し,試料の捻じり角度と重量エネルギー密度の関係を得た。その結果,CF試料では貯えられる重量エネルギー密度は最大で1.1×10-6 rad/Aの捻り角のとき0.052 MJ/kg,GO試料では最大で3.2×10-8 rad/Aの捻り角のとき3.8×10-4 MJ/kgを得た。これらの値はCNTのシミュレーション結果(8 MJ/kg)より大幅に低い値であったが,捻り材料としてナノカーボンを用いて実験結果を得ることが出来たことは極めて重要である。また,エネルギー再生効率は,材料が塑性変形を起こさない限り80%を超えた。今後はより大きな捻じり角度まで測定可能と考えられる配向した単層CNTやCNT撚糸試料を用いて,重量エネルギー密度を測定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ナノカーボン(特にカーボンナノチューブ;CNT)に貯蔵できる機械的な重量エネルギー密度を実験的に求め,ナノカーボンをワインドアップ式機械的エネルギー貯蔵材料として応用展開するための基礎を確立することである。平成25年度の計画として,(1)ひも・糸状の捻り試験用CNT試料の作製(2)トルクおよび引張力の測定装置の構築(3)CNTに貯蔵できる重量エネルギー密度およびエネルギー再生利用効率を明らかにすることを掲げた。 このうち(2)の測定装置の構築は,オリジナルの治具作製や三点チャック・ラチェットを組み上げることで既に完了し,測定を随時行える状態になった。さらに,捻じり試験中の試料の温度変化を観察するための赤外線カメラも設置済みである。(1)(3)の測定試料作製および実際の測定については,カーボンファイバーおよびバルク体としてハンドリングが容易で強度を有する酸化グラフェンから捻じり測定試料を作製し,試料の捻じり角度と蓄えられる重量エネルギー密度の関係を得ることに成功している。ナノカーボンを用いて捻り試験を行い,貯蔵できる重量エネルギー密度を得ることが出来たことは,平成25年度研究における大きな進展である。 今後さらに大きな捻じり角度まで測定可能なCNT試料を作製する必要があるが,平成25年度の研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では,酸化グラフェンを用いて,ナノカーボン材料に貯蔵できる機械的な重量エネルギー密度を実験的に求め,その再生利用効率を求めることに成功した。しかし得られた重量エネルギー密度は,シミュレーション結果やリチウムイオン電池の値を超えることはできなかった。これはナノカーボン試料をバルク体として扱った際の試料の脆さによるものであった。このことを改善するため,今後長尺カーボンナノチューブや高配向カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブ撚糸試料を作製し,より大きな捻じり角度までトルクおよび引張力を測定し,重量エネルギー密度を求めていく。さらに,当初の平成26年度の計画通り,カーボンナノチューブのナノ構造の違い(1)カーボンナノチューブ壁の枚数(単層,二層,または多層)(2)Raman散乱のG/D比で定量化されるグラファイト化度(3)金属触媒やアモルファスカーボンなどの純度の影響(4)表面官能基の存在等によって,貯蔵できる重量エネルギー密度とエネルギー再生効率がどのように変化するかを解明する。さらに,測定中の試料温度の変化を赤外線サーモグラフィーにより,試験後の試料の変形をRaman散乱や電子顕微鏡観察により明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に必要な実験設備やカーボン材料・実験試薬を購入した結果,\22,696が残金となった。この金額は平成26年度予算と合算しカーボンナノチューブ類等を購入したほうが有効に使用できると判断したため次年度使用額が生じた。 平成26年度予算の主な使用目的は,実験試料であるカーボンナノチューブ類および実験器具の購入と旅費である。次年度使用額は主にカーボンナノチューブ類の購入資金として使用する予定である。
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