2014 Fiscal Year Research-status Report
農山村における男性層の支援を介した女性のエンパワーメント・プロセスの解明
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25870864
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
畠山 正人 金城学院大学, 国際情報学部, 講師 (50635240)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農山村 / 中山間地域 / コミュニティ / 男女共同参画 / 社会的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、ネットワーク分析に基づいて析出された中山間地域における男女間ネットワーク集団が、地域の意思決定場面での女性の参画の面で、どのように機能しているのかを調査し、検討した。島根県雲南市での事例調査の結果、地域内の男女間ネットワークが以下の二点で機能しているという示唆が得られた。 第一に、中山間地域の運営場面における世帯代表主義や一戸一票制といった、住民女性にとって不利な意思決定構造が根強く残る状況において、このネットワークは女性が穏便かつ段階的に地域の意思決定過程に参画する一手段になりえることが示された。調査地域では、この男女間ネットワークの中では各々が発言しやすいよう会議がデザインされており、女性が立案したものも含め様々な活動がこの場で企画・試行されていた。 第二に、上述のような開放的な組織風土は、地域に既存の運営規範を変える可能性を持っていることもわかってきた。この男女間ネットワークのメンバーがイニシアチブを取り、例えば個々の集落の話し合いの中に他の集落の住民が加わる等、既存の運営規範を超えた取り組みがなされていた。 以上より、中山間地域において近年、徐々に形成されている男女間ネットワークは、男女共同参画のイニシアチブとなるのと同時に、地域運営の伝統的構造や規範を揺さぶる可能性を持つものだという示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では中山間地域の中で(異なる地理的経済的条件を持つ)二地域を比較しつつ、問いを明らかにしようと試みている。当初予定では、このうち一カ所の調査を平成26年度内に概ね終了すること、また、同年度内に他の一カ所への調査の準備(地域住民への説明、予備資料の収集)を行う予定であったが、これが実現できた。 さらに、毎年度に研究成果を整理するために学会報告または論文執筆を行う予定であったが、これも当初予定通り実現できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにしてきた男女間ネットワークの形成過程モデルやその機能について、二地域の事例比較により再検証を行い、その妥当性ならびに問題点を整理していく。これに基づき、これまで築いたモデルの再修正を行う。そのため、残された一地域での資料収集ならびに行事、会議への参与観察を行いつつ、その結果を整理、分析し、結果を学会発表や論文執筆等の形で公表していく。
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Causes of Carryover |
その他費用にかかる経費について、以下二点のコスト削減があった。第一に、資料複写費についてPDF化しPC上に保存したことにより、コストが削減されたことが理由に挙げられる。また、旅費の一部を減額できたことが第二の理由である。具体的には、当初予定していたレンタカー代を負担することなく、行政機関の公用車への同乗や(調査先の近隣にある実家宅の)自家用車の無料貸与を受けられたこと、さらには、公民館等の無料宿泊地に宿泊できたことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費として愛知県豊田市への現地調査(10日間程度で40千円)ならびに研究発表のための旅費(2日間で40千円)に充当することを見込んでいる。その他費用については、当初予定通り学会参加費(10千円)と論文別刷(50千円)を見込んでいる。その部分の経費については、会議の文字起こしならびに行事のビデオ撮影を個人事業者に依頼するため、人件費・謝金(90千円)に充当することを見込んでいる。
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