2015 Fiscal Year Annual Research Report
公共的な対話活動の営みが果たす「シティズンシップ教育」の可能性に関する研究
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25870866
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
三浦 隆宏 椙山女学園大学, 人間関係学部, 講師 (90633917)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 哲学カフェ / アゴラ / 閾(しきい) / 相談 / 開かれた対話 / 公共的な対話 / それなりの市民 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる平成27年度は、仙台(せんだいメディアテーク)、大阪(中津ぱぶり家)、石川(西田幾多郎記念哲学館)で行なわれた公共的な対話の場の調査・研究を新たに実施した。過去二年間持ち越しとなっていた仙台での「てつがくカフェ」の調査を5月に行なうことができたこと、そして研究期間の最後とも言える2月に西田哲学館で初となる哲学カフェを私自身が進行役を務めることで開催できたことは大きな成果であったと言える。 また中津ぱぶり家での「いまの世を生き抜くための勉強会」や大阪大学で行なわれた「哲学相談(哲学カウンセリング)勉強会」、そして東京で開催された「オープンダイアローグ」のシンポジウムといった場に参加することで、哲学カフェよりも対話のサイズが小さく、当事者どうしの「相談」を中心とした対話の場の重要性に気づかされたのも大きな発見であった。その結果、いまでは公共的な対話活動を「間口の広い」アゴラタイプと、「間口の狭い」閾(しきい)タイプの二種類とに分けるという理解に至るようになった。 なお、研究課題の後半にあたる「シティズンシップ教育」に関してであれば、本研究の開始年度である平成25年度より、名古屋の哲学カフェの定期開催を行なってきたが、そのさい私がイニシアティブをとるというよりも、常連参加者の何人かと共同で企画を立て、運営するというスタイルを取った。その結果、私や大学所属の研究者ばかりが進行役を「任される」のではなく、学生や一般市民の方が進行を担当したり、哲学カフェの運営に関わったりするというのが徐々に自明の雰囲気となってきた。そして今年度の後半からは、私が一切関与しないかたちでの哲学カフェが定期開催されるにも至った。これは公共的な対話活動が、プロにお任せするのではなく自分たち自身で各々の役割を担うという「シティズンシップ」の意識を育んだ一つの具体的な成果であると言えるだろう。
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