2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の地域別失業率を分析する計量モデルの構築とその応用
Project/Area Number |
25870867
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
増田 淳矢 中京大学, 経済学部, 准教授 (40549599)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 失業率 / 空間計量経済学 / VARモデル |
Research Abstract |
本研究は日本全体ではなく各地域の失業問題について焦点を当てている。日本の各地域において失業率の値は極めて異なった値を示しており、例えば大阪府や沖縄県では非常に高い値になっている。このことについてはさまざまな先行研究で指摘されているものの、それはクロスセクションデータを利用しており、特定の時点でその地域の失業率がどうして高いのかを中心に研究したものが多い。本研究ではパネルデータを利用して地域の失業率が時間が経つにつれてどのように変化したか等を分析している。例えば失業率が高い地域があった場合に時間が経過するにしたがってその失業率が低くなって日本の平均に収束する傾向があるかどうかを検証している。具体的には日本の県別のデータを利用して、失業率を被説明変数とし、説明変数としてその地域の景気変数と周辺地域の失業率で回帰している。その結果は分かったことは、失業率はその地域固有の景気の変動だけではなく、他の地域の失業率にも影響があることが確認された。このことは失業率が高い県が存在すると周辺地域もまた失業率が高くなっていき、逆に周辺地域の失業率が高いとその県の失業率が高くなることを示している。このことは時系列データを利用して初めて分かることであり、先行研究等で多く使われているクロスセクションデータを用いた分析では単に失業率が高い県が集中していることしかわからず、時間が経つに従って波及していくかどうかは分からない。本研究では空間計量の手法を応用して時系列データを利用しために失業率が周辺地域に波及していくことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね遅滞なく進んでいると判断している。本研究の1年目の計画では次の点を行うことを想定していた。一つ目として地域別の景況感や失業の度合いを表す指標(データ)を作成すること、二つ目として地域間の相関関係を明示的に導入するモデルを作成すること、三つ目として失業率の年齢別の波及効果を分析するモデルを構築することである。この中で一つ目、二つ目は予定以上の進行が認められ、最初の計画では2年目に行う予定であったモデルの拡張等を行うことが可能になった。三つ目の年齢別の失業率を分析するモデル構築することについては多少の遅れが見られる。具体的にはモデルの構築自体は行えているものの対応するデータがないため仕方なく推計を行ってデータの作成を行った。データを推計しているため、年齢別の失業率の波及効果を分析する上で推定量の誤差が大きくなる等のさまざま推計上の困難に直面することになった。このことの調整を行っていくことに大幅な時間を要した。ただし、他の点で計画以上の進行であったため、多少の遅れは見られるものの大きな問題にならなかった。このように研究は問題なく進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度(最終年度にあたる)の研究方針であるが、最初の計画に添って行っていく。2014年度は計画では失業率の分析をパネルデータに拡張していく予定である。現状では一般にパネルデータを利用しているものの実際には制約を入れたSUMモデルとして推計を行っている。このため失業率が他の地域に波及しているかどうかは分析できるが、どのように波及していくかを明示的に計算することは非常に複雑なものとなっている。このため、2013年度の研究では失業率の値に仮定等を入れた上で波及効果を計算している。このように現状のモデルは複雑で有り、推計等も困難なものになっている。このため、今年度はパネルモデルとして分析しやすいモデルの構築を目指す。 また、パネルデータを利用することにより副次的な効果として時間効果と呼ばれる効果を検証することが可能になる。この時間効果は一般的にマクロの効果を表しており、例えば日本全体のマクロショックが東京都や北海道にどのように影響を与えているか分析することが出来る。このため本研究は地域に焦点を当てた研究であるものの、地域の集合であるマクロ経済に対しても分析することが可能になる。よってパネルデータを利用した時点効果を導入可能なモデルを導出し、推計を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では初年度に大規模なシミュレーションや大規模なデータを用いた推計を行うために複数台(5台)のコンピューターを購入する予定であった。既存のコンピューターの性能上昇や予想よりも計算負荷が低かったことにより、コンピューターの購入台数を減らし(4台)、また一台あたりの購入金額も想定よりも低かった。このことにより繰り越しが生じることになった。 前年度の繰り越しはコンピュータの購入台数が少なく、また一台あたりの額が少ないことにより発生したため、今期は繰越額を利用してコンピュータのさらなる増強を行う予定です。本研究はコンピュータの台数が多ければ多いほど精緻な研究成果を生み出せるため、追加でコンピュータの購入を行う。
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