2013 Fiscal Year Research-status Report
レンジ可変型陽子線治療における新しい呼吸同期照射に関する研究
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25870872
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
林 直樹 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (00549884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 呼吸性移動 / モニタユニット / エネルギー変調 / 同期照射 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は回転型陽子線レンジ可変機構を搭載した陽子線治療装置において,呼吸認識装置を搭載したエネルギーレンジ可変型呼吸同期システムの提案とその運用である. 平成25年度においては,基礎調査項目として人間の呼吸サイクルの解明と呼吸性移動によって生じる標的体積の変化を評価した.また,陽子線治療装置のレンジ可変機構の動作速度と呼吸性移動の同期精度についてシミュレーションすることと,照射に先立つアプリケーションとしてモニタユニット(MU)値の計算ソフトを開発した. 生体の呼吸性移動については,関係学会の示すガイドラインに従い人体モデルファントムを用いて実測を行った. 回転型陽子線レンジ可変機構は様々な吸収体の厚みのある回転体をビームライン中に挿入し,その回転体を高速で回転させることでレンジを変化させている.このシステムのエネルギー生成精度とその評価法については前回の補助金研究によって明らかになっている.本研究では回転速度と呼吸性移動の同期精度に関する検討を重点的に進めた.その結果,人間の呼吸は平均15-20回/分であり,その移動方向は頭尾方向が一番大きく,ついで腹背方向,左右方向であった.肺野内の腫瘍の位置によっては腹背方向と左右方向は逆となる.エネルギー可変によってのメリットは深さ方向(腹背方向)の同期照射である.呼吸性移動の規模ならびに頻度を考慮したシミュレーションでは,高速回転ホイールの任意動作によるエネルギー変調機構は深さ方向の可変性を担保するには問題ないということが推察された.また,その照射量を担保するMU値,そしてMU値計算ソフトについては,照射ヘッド散乱の考慮することが課題であるが,基準条件においては問題ない計算精度であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究期間を研究期間Aと研究期間Bに分け,平成25年度は研究期間Aに該当する. 研究期間Aでは新しい呼吸同期システムが完成するまでの基礎的評価を主な研究項目として挙げており,シミュレーションベースの基礎研究と呼吸同期システムの設計と発注がその主な項目となっている. 我々が平成25年度中に実施した研究項目は,人体を模擬した呼吸モデルでのシミュレーション,陽子線治療装置のスペックを鑑みた呼吸同期システムの妥当性の検討,モニタユニットの計算ソフトウェアの開発である.これらは,研究計画書に記載した項目を十分に含んでおり,関連学会においてその成果は発表している.呼吸同期システムの発注がまだ済んでいない理由は,研究計画書の段階で入手した陽子線治療装置の設計図と実際の陽子線治療装置の幾何学的構造図に若干の乖離があり,平成25年後半にシステム設計の方向性の再検討が余儀なくされたためである.しかしながら,今回の研究対象の陽子線治療装置のみならず,他大学にて構想されているほぼ同型の陽子線治療装置を視察し,その共通点と問題点の洗い出しを行ったので,平成26年度はそれらを整理して建設的な到達目標を想定して研究を遂行していきたいと考えている. よって,研究計画書で想定した研究期間Aの到達目標とは若干の乖離があるが,研究期間Bでの到達目標を鑑みると,概ね予定通り進行しており,今後の研究の方向性も明らかとなったことから,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究としては,研究期間Aに挙げた到達目標を概ね達成したと結論付けた.しかしながら,陽子線治療装置は当初の研究計画書とは異なる幾何学配置であることやシミュレーションを実施する過程で,最終的な呼吸同期システムのデザインを若干訂正する必要があるということが分かった.今後の方策として,平成26年度は新たな設計に着手し,呼吸同期システムの開発に向けた新たなソフトの開発,ならびに呼吸妥当性を評価するツールの開発を重点的な課題とする予定である. モニタユニット計算ソフトは照射ヘッド散乱の考慮が不十分であることから,不整形照射野や大照射野,スノートの位置が標準条件から著しく乖離している場合は,現状のソフトでは臨床的に使用できない.この問題点を解決するために,モンテカルロシミュレーションを実施してヘッド散乱を予測する機能を挿入することや,新たな内挿法の提案を打開策として挙げる.また,呼吸同期の妥当性を評価するツールとして,等速円運動や正弦波運動をするファントムを開発し,そのファントムに対してスポットスキャニング照射をするシステムを開発し,その妥当性を検討することを今季の目標としたい.また,他施設の陽子線治療装置の運用状況を把握するため,名古屋市のみならず北海道大学や国立がんセンター東病院,放射線医学総合研究所などの呼吸同期照射を実施する施設での情報収集も研究の差別化を図るためには重要と考える.今後はそのバランスを考えて実施していきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に実施予定だった項目は,シミュレーションベースの基礎研究と呼吸同期システムの設計と発注がその主な項目となっていた.我々が平成25年度中に実施した研究項目は,人体を模擬した呼吸モデルでのシミュレーション,陽子線治療装置のスペックを鑑みた呼吸同期システムの妥当性の検討,モニタユニットの計算ソフトウェアの開発である.この理由として,研究計画書作成時に入手した研究計画書の段階で入手した陽子線治療装置の設計図と実際の陽子線治療装置の幾何学的構造図に若干の乖離があり,平成25年後半にシステム設計の方向性の再検討が余儀なくされたためである.よって,呼吸同期システムの設計から発注までの流れを完了できなかったため,支出は当初の計画よりも抑えられている. 平成26年度では,他の研究者の開発状況の情報を収集し,自身の研究との差別化を図りながら,新たな呼吸同期システムの提案,発注をしてその妥当性評価をする予定である. この発注という作業において大きな予算を執行することになるが,それのみならず,他施設の見学,会議そして研究成果の発表を行う予定である.研究成果の発表は国内はもとより海外での学会も視野に入れているため,旅費が大きくなることも予想される. また,妥当性評価においては,ラジオクロミックフィルムや熱可塑性樹脂といった消耗品検出器の使用も視野に入れており,これらの発注も必要である.以上のことから,今年度の予算は当初の予定通り執行することは可能と考えている.
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Research Products
(14 results)