2015 Fiscal Year Annual Research Report
人道的介入の実践における倫理/非倫理の類型化-〈奪命の倫理〉探求の準備研究
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25870877
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
大庭 弘継 南山大学, 付置研究所, 非常勤研究員 (00609795)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 保護する責任 / 人道的介入 / 国連平和維持活動 / 奪命の倫理 / よりマシな悪 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、1回の学会報告を行い、2本の論稿を刊行した。 本年に行った学会報告は、グローバルガバナンス学会における「未完に終わる『責任』―思惑のズレ―」(2015年4月)と題したものであった。この内容を修正したものを同学会の学術誌『グローバル・ガバナンス』第2号にて、「規範の軋轢 ―リビア介入後の4年間における保護する責任と文民保護の動向―」(2015年12月)と題して公表した。この論文において、リビア介入後の4年間における保護する責任の議論が停滞する一方で、進展しているとも看做しうる活動を取り上げた。特に、南スーダンの文民保護キャンプ(POCキャンプ)における文民保護の限界、コンゴ民主共和国で史上初めて導入されたPKOの戦闘部隊、介入旅団(Intervention Brigade)の評価について論じた。 また保護する責任と政治理論の概念との関係についての論文も発表した。保護する責任の主張は、保護するべき人々を犠牲にしてしまうという根本的問題を胚胎するがために、他の政治理論の概念と結びつけることで正統性を強化しようとする傾向もある。それら概念の中で、欧州連合(EU)等の理論的支柱として確立されている補完性の原理を取り上げた。保護する責任は、人道危機に対処する責任をまずは国家に次に国際社会に措定しているため、小さな共同体の主体性を強調する補完性の原理と親和性があるものと考える。しかし、そこに胚胎する問題点があると考え、南山大学社会倫理研究所の『社会と倫理』第30号で公表したのが「保護する責任と補完性原理の親和性と問題点 : マイケル・シーゲル氏の指摘をもとに」である。この論文において、保護する責任が想定する人道危機は小さな共同体が事実上崩壊している状態であり、小さな共同体が機能することを前提とする補完性の原理と想定する状況が乖離している、と論じた。
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Research Products
(3 results)