2013 Fiscal Year Research-status Report
フランス型放課後活動支援と社会統合のあり方に関する研究
Project/Area Number |
25870878
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
小林 純子 南山大学, 外国語学部, 講師 (00611534)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放課後 |
Research Abstract |
本研究は、フランス型放課後活動支援の実態を明らかにし、共生の場や社会統合の場としての放課後活動支援がどのように行われているのかを探ることを目的としている。 平成25年度の現地調査では、8月にパリ市内の富裕地区における余暇センターと、それらの余暇センターを統括している地区事務局を訪れ、長期休暇中の子どもの過ごし方、余暇センターの活動に携わるスタッフの役割と活動の方法、これらの活動と市政のあり方、国の教育政策の動向との関係を明らかにした。 余暇センターの活動に参加した結果、以下のことが明らかになった。(1)パリ市の余暇センターは障害をもつ児童を含め居住地に関係なくどのセンターにもアクセス可能となっており、その意味においてひとまず共生の場を提供しているということができる。しかし「共生」や「社会統合」を目的とし、その目的に特化した活動を追求するということはできなかった。このため、どのような状態やプロセスを「共生」や「統合」と呼ぶのかを再検討することも含めて、それらを目指した取り組みを明らかにすることが今後の課題として残された。(2)パリ市の余暇センターは、活動の場、活動時間、活動形態、予算、職員のステイタスのいずれにおいても高度に制度化されている。(3)その高度な制度化ゆえに、センターで子どもを預かることにまつわるさまざまな制約の中で創造的な実践を模索しなければならない。こうした創造的実践を助けるために市では美術館をはじめとする文化施設、学校、アソシエーションをネットワーク化することを試みたり、さまざまなリソースセンターを設置したりすることで、余暇センターの活動をダイナミックなものにしようとしているが、これらを利用するかどうかは個別のセンターの状況や判断に依存しているため、センターによってはネットワークが活用されていないこともある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はフランス型放課後活動の実態を把握するため、およそ「放課後活動」と呼ばれる活動を行っている場として、小中学校と余暇センターにおける調査を計画している。このうち、パリ市の余暇センターにおける調査は予定通り平成25年度の8月に実施に至った。そこでは、学校休暇期間中に実施されている様々な活動を明らかにすることができた。その中で、フランス型放課後活動支援のひとつとしての余暇センターの運営や設置の特徴をより鮮明にするために、日本の地方自治体の子どもの受け入れ施策との比較を行う必要性を強く認識するに至り、現在日本における追加調査を検討している。 このため、余暇センターをはじめとする地方自治体による子どもの受け入れ施策に関連した調査とその準備に、当初の計画よりもより多くの時間を割く必要が生じており、小中学校の放課後支援の調査があまり進展していない状況にある。小中学校の放課後活動支援には、国民教育行政が行うものもあれば、自治体や市民アソシエーションが行うものもある。共通点は授業期間中の放課後に学校で活動を行っていることである。こうした活動の中でも、芸術文化活動を実施している学校は、国民教育行政系列のものであれ、自治体・アソシエーション系列のものであれ限られており、現在はその特定作業を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は今後「共生」や「社会統合」という視点をとりわけ重視しながら放課後活動支援について文献資料調査ならびに実地調査を行う方針である。第一に、パリ市内の小中学校における学校休暇期間中の学習支援活動を明らかにする。学校休暇期間中の学習支援を行っている小中学校は限られており、まずはどのような学校でいかなる取り組みがなされているかを特定する。 第二に、学校休暇期間中に活動する余暇センターのうち、芸術文化施設と協同してプロジェクト活動に取り組んでいるセンターを訪問する。このプロジェクトの関係者として施設側のコーディネーターや余暇センターのアニマトゥール、市の文化政策担当者に対するインタビューを試みる。 第三に、学校授業期間中の放課後活動を明らかにする。市が提供する放課後活動は、学校の授業期間中と休暇期間中では、スタッフや活動内容に差がみられる。また小学校の学習リズムに関する改革によって2013年からは火曜日や金曜日の午後は市とアソシエーションが放課後活動を提供している。市やアソシエーションは改革以前から授業期間中にも放課後活動を提供してきたが、このような活動はどのように実施されているのか、とりわけ芸術文化活動に関連した取り組みを調査する。 第四に、日本の地方都市における自治体による放課後活動支援の実態を明らかにする。自治体によっては極めて多様かつ充実した活動を提供しているが、取り組みの方法や政策にフランス型放課後活動支援と異なる特徴を見いだせる。こうした特徴を明らかにし、比較検討することを通じて課題や対策を探る。 第五に、パリ近郊都市における余暇センターの活動を明らかにする。パリ近郊都市にはパリ市内の富裕層とは異なる人口集団が見いだせる。またアクセス可能な文化施設は限られている。こうした都市の取り組みに着目し、パリの取り組みとの比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費において使用額が予定使用額の1008円分下回ったため。 次年度の物品費に加え、物品費の使用執行計画を501008円として使用する。
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Research Products
(1 results)