2013 Fiscal Year Research-status Report
声帯振動の特殊性に起因する声質を制御可能な音声分析合成方式の開発
Project/Area Number |
25870883
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂野 秀樹 名城大学, 理工学部, 准教授 (20335003)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 音声分析合成システム / 声帯振動のモデル化 / 声質制御 / 並列化 / GPGPU |
Research Abstract |
平成25年度は、(1)特殊な声帯振動のモデル化・声質制御と(2)音声分析合成アルゴリズムの高速化に関する検討を重点的に行った。 (1)については、スクリーム唱法による歌唱音声を用いて検討を進めた。様々な分析手法を試したところ、通常発声による歌唱音声とスクリーム唱法による歌唱音声の声帯振動の違いが、帯域ごとに算出した残差スペクトルの尖度に極めて明確に表れることを発見した。そして、この違いを適切にモデル化することにより、通常発声の音声を入力として、スクリーム唱法に近い音色を持つ音声を合成する手法を開発した。具体的には、予めスクリーム唱法の音声から帯域ごとに残差スペクトルの尖度と群遅延の値との対応関係を算出しておき、この対応関係に基づいて入力音声の群遅延スペクトルの変動特性を変化させるという手法である。群遅延スペクトルの情報自体を音声から安定して取り出すのが困難であることは、我々のこれまでの研究で判明しており、本手法はこのような問題が存在しないという大きなメリットもある。 (2)については、我々の研究グループが音声分析合成システムの基盤として用いているSTRAIGHTの高速化についての検討を行った。現在のSTRAIGHTにおいては、基本周波数抽出部であるXSXの計算負荷が高いことが分かっている。XSXにおいては、STRAIGHTにおける心臓部とも言うべきパワースペクトル推定部と同等の処理がかなりの回数実行されている。XSXにおけるこの処理は、独立性が高く並列に実行することも可能であり、今回の検討では、この処理をマルチスレッドによる並列化及びGPGPUによる並列化で実装し、処理速度の比較を行った。その結果、XSXの処理速度が、非マルチスレッドのものと比べて、マルチスレッドによる並列化では約1.9倍、GPGPUによる並列化では約3.6倍高速であることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特殊な声帯振動のモデル化・声質制御については、既存の手法では安定した行うことが難しかったスクリーム唱法による歌唱音声の分析合成が可能となる新しい手法が開発できたと言え、この点に関しては当初の計画以上の成果が得られたと考えている。現在、この成果に関連する特許を申請中であり、論文投稿の準備も進めている。ただし、当初予定していた声帯振動を電気信号(EGG)として取り出すLaryngographなどの機器を用いた音声の収録については、Laryngographの入手性の悪さなどもあり、現在までに入手ができておらず、26年度に持ち越すこととした。 音声分析合成アルゴリズムの高速化については、既存のシステムに比べて顕著な高速化ができており、順調に研究が進展していると言って良い。 その他の研究項目についても、ピッチ周波数の推定に関する検討については、今のところ大きな進展が見られないものの、それ以外は概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に予定していた課題の中で、声帯振動の特殊な音声に対するピッチ周波数の推定に関する検討については、重点的に進めていきたい。まずは、入力信号を細かく帯域分割することで、ピッチ周波数と関連する情報が取得できないか検討する予定である。この部分においては、平成25年度に著しい成果のあった、音声分析合成アルゴリズムの並列化の技術が有用だと考えている。 それ以外については、当初の予定通り、引き続いての音声の収録や、システムのリアルタイム化などに関する検討を進めていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度における主観評価実験の被験者の時間数が、予定と異なっていたため。 必要となる主観評価実験については、早急に実施する。
|
Research Products
(7 results)