2014 Fiscal Year Research-status Report
女性スポーツ黎明期における女子水泳の競技環境構築に関する研究
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25870886
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
木村 華織 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 助教 (50634581)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 女子水泳 / 組織化 / 日本水上競技連盟 / 女子部委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,計画時にあげた研究課題1から3のうち,課題2の「水連の女子水泳を対象とした組織的活動と女子部委員会の実態」について,女子水泳の組織化という観点から史料調査による検討を行った.その結果は以下の3点にまとめられる. ①水連における女子の位置づけ:水連の規約(1924年度から1939年度)を用いて検討を行った結果,水連は設立当初より女子の日本選手を開催する権利及び女子選手の記録公認権,代表権を所持していた. ②水連「女子部」の設置経緯:女子水連は1929年の設立以降,独自で競技会を開催するなどの活動を展開していたが,1932年以降の水連の事業方針の変化により,老若男女を含む水泳の全国普及に変化した.女子部の設置は女子水泳の普及に伴うものであり,この実務を担ったのが元選手である女性たちであった. ③「女子部」設置によってもたらされた変化:女子部の設置により,選手経験をもつ多く女性たちに指導者や組織者としてスポーツ組織に関わる機会がもたらされた. 本検討の結果は「女性スポーツの発展を推し進めたのは主として男性であった」という女子陸上競技を対象とした従来の研究成果と一致するものではなかった.本検討によれば,この時期の女子水泳は元選手である女性たちによって牽引され,元選手たちの自発的な活動が水連を動かす契機となり女子水泳の組織化を進めたと考えられる.上記の研究成果は,スポーツとジェンダー研究,Vol.13,2015年に原著論文として掲載されている. その他に,国際オリンピック・アカデミー(IOA)への訪問調査及び関係者への聞き取り調査が可能となったため,急遽予定を変更して実施した(ギリシャ).IOAでは,本研究が対象とする時期のオリンピックにおける当時の女子水泳の位置づけやその歴史的背景について調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間(平成25年度から27年度)の研究期間のうち,平成25年度は,従来の研究ではまったく触れられていなかった女子水連の組織概要及び活動実態にについて検討した.一次史料の発見はなされていないが,収集した史料を包括的に検討することで,この組織の実態の主要な部分は明らかにすることができた. 平成26年度は,本研究で設定した課題1から3のうち,課題2と課題3の遂行を予定していた.課題2については予定通り作業が遂行され,課題1で明らかにした内容とあわせて原著論文として研究成果をまとめることができた.課題3「高等女学校を対象とした競技環境に関する調査と検討」については,十分なまとめをするには至っていないが,代表者の従来の研究を深化させるために必要な史料や聞き取りデータは収集済みである.これらのことから,研究計画は,おおむね順調と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の進行状況に鑑み,課題3のまとめを行いつつ,基本的には引き続き計画に沿った研究活動を行う.最終年度にあたる平成27年度は,女性スポーツ黎明期における女子水泳がどのように普及し,競技環境が構築されていったのかについて,これまでの研究成果をもとに総合的な検証を行う予定である.しかし,この検証をするにあたっては,平成25年度の「科学研究費助成事業実施状況報告書(平成25年度)」において追検討課題としてあげていた,東京YWCAに関する検討が不可欠である.その理由は,東京YWCAが社会教育団体として日本で初めて女性専用の屋内プールを設置した団体であり,また,東京YWCAの関係者が1932年に設置された水連女子部の委員に就任していたことが平成26年度の研究成果によって明らかになったためである.東京YWCAの水泳に関する取り組みについては,東京YWCAの機関紙『地の塩』を史料に用いる.史料の収集は昨年度に終えている. 以上,最終年度は,①東京YWCAの水泳に関する活動実態の検討,②女子水泳の普及および競技環境の構築に関する総合的検証,の2点を研究課題とし,本研究の成果をまとめる.
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Research Products
(4 results)