2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870889
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
伊藤 まり子 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (70640887)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベトナム / 宗教組織 / 女性 / 親密圏 / 連帯 / コンフリクト / 社会福祉 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、ベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)における宗教組織の活動を検討することを通じて、それに積極的に参加するシングル女性の生活世界を明らかにすることにある。従来の研究において「社会的周縁」に位置付けられると考えらたシングル女性たちが、宗教組織を基盤とする活動を通じて、いかに社会と接合し、自らの生活を秩序立てているのかを検証することが最大の目的である。 初年度である26年度は主に文献調査を中心として、本課題と関連する研究分野の動向を整理し、その分析を行った。それを踏まえて二年目となる27年度は、ベトナムにおける現地調査を実施し、資料収集に取り組んだ。より具体的には、8月から9月の約一か月半と、3月の10日間、ホーチミン市で活動する宗教組織「カオダイ教ドータイン聖室」を対象にして、組織活動の全体的な把握と、活動を支える女性たちについて聞き取りおよび参与観察に基づく調査を実施した。 従来ベトナム南部地域社会は、北部地域社会と比較して住民の自由と移動性が高く、開かれた社会構造であることが指摘されてきた。またその基盤となる家族・親族関係は、夫婦を単位とする核家族が基本となり、系譜意識の希薄さ、末子相続、妻方居住が特徴とされた。そのため村落の共同性が発達しなかったとされる当該地域では、その代替となる多様な宗教組織の生起が注目された。さらに、長期的な戦争状態にあった当該地域において、家族や夫を亡くした女性は珍しくなく、そうした女性たちが宗教組織の活動に参加することで福祉的なサポートを享受していることも推測された。 今年度の調査では、出家者として生きる複数名の女性たちへのインタビューを実施し、出家者となった経緯を含め、宗教施設での生活および社会との関わりについて検証した。他方、積極的に活動に参加する在家女性たちにも同様にインタビューを実施し、彼女たちの活動の実態を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、ベトナムのハノイ市で活動する仏教組織を調査対象の一つに選定し、その活動の実態を検証する計画であった。しかし当該組織が実質上の活動休止状態にあることがわかったため、当初の研究目的および計画を変更し、ホーチミン市で活動する「カオダイ教ドータイン聖室」の調査を本研究課題の中心に据えることに方針転換した。しかし「カオダイ教ドータイン聖室」に調査の焦点を絞り、より長い調査期間を通じて詳細な資料収集が可能となったため、代表者が長年取り組んできたハノイ市におけるカオダイ教組織の活動と比較するうえで十分な資料が収集できた。したがって研究計画の方針転換による現状の遅れは、成果の質を高めることで十分に取り戻せることが推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる27年度は、昨年に引き続きホーチミン市の「カオダイ教ドータイン聖室」でのフィールド調査を実施し継続調査を行うと同時に、調査で収集した資料の分析も進め、その成果としての論文執筆と国内外での学会において研究報告を行う予定である。
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