2014 Fiscal Year Research-status Report
オーケストラ楽団における収益性とブランド購買の二重苦
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25870890
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
涌田 龍治 京都学園大学, 経営学部, 准教授 (70433505)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Double Jeopardy / ディリクレモデル / オーケストラ / 鑑賞頻度 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、収益性を高めるような顧客維持率をプロオーケストラ楽団を事例にして明らかにすることを目的としている。そのために、次の二つの仮説を検証することが、本研究の最終的な課題である。第一は、プロオーケストラ楽団であっても、クレジットカード会社などのサービス業と同様に、その市場は、Double Jeopardy現象を示すディリクレモデルで記述できるはずである、という仮説である。第二は、他楽団よりも市場浸透度が低いにもかかわらず鑑賞頻度の高い楽団、すなわちディリクレモデルによる理論値から逸脱した鑑賞頻度の値を示す楽団の営業利益率は高いはずである、という仮説である。この二つの仮説を三年間かけて検証する。 研究二年目となる本年度は、主として第一の仮説の検証を行った。そのため、大きく二つの作業を行った。ひとつは、市場がディリクレモデルで記述できていると判断するための基準を明確にするために、クレジットカード市場におけるディリクレモデルの近似程度を明らかにした。この作業の成果は、査読論文1本、論文2本、学会報告1件にまとめられた。これにより、市場がディリクレモデルで記述可能であると判断するための基準が明らかとなった。 もうひとつは、オーケストラの市場が基準の範囲内でディリクレモデルで記述できるかどうか実証することである。そのため、2013年度時点で日本オーケストラ連盟に加盟していた正会員25楽団すべてを対象にして、各楽団のコンサートに一度でも行ったことのある人々にアンケートを行い、データを収集した。複数の楽団のコンサートに行ったことのある人々もデータに含まれる必要があったため、リサーチ会社のモニターを回答者に選定した。集めた調査方法が妥当であるかどうか、また、データ分析の速報結果を、論文1本、学会報告1件にまとめた。これにより、第一の仮説は支持されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、これまで入手できていたクレジットカードに関するデータを再分析し、オーケストラと比較可能な基準を示す成果をまとめた。また、当初計画されていたアンケートを行い、鑑賞者のデータを得ることができた。さらに、第一の仮説の検証が進み、学会報告などでその成果をまとめることができた。 しかしながら、本年度5月に入手予定であった、オーケストラ楽団の収益性に関する財務データをいまだ入手できていない。その理由は、公開される財務データが前々年度のものであったためである。次年度の5月以降に、アンケートの対象となった年度の財務データが入手できるようになる予定である。 以上から「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の最終年度となるため、成果のまとめを中心に行う。 第1に、本年度学会で報告された結果を、さらに精緻に分析し、学会で報告し、それらを文章化して論文にまとめる予定である。学会報告の申し込みをすでに終えている。 第2に、5月以降に公開される予定の財務データを入手し、第二の仮説を検証する。すなわち、他楽団よりも市場浸透度が低いにもかかわらず鑑賞頻度の高い楽団、すなわちディリクレモデルによる理論値から逸脱した鑑賞頻度の値を示す楽団の営業利益率は高いはずである、という仮説である。この仮説の検証結果を、学会報告を行うことでまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定では、当年度のオーケストラ楽団の鑑賞行動を当年度の三月末にアンケートによって収集する予定であった。しかし、次年度の四月上旬にアンケートを行ったほうが、回答者の鑑賞行動が確定しているため、彼らが前年度の鑑賞行動を回答しやすいと判断し、次年度の四月上旬にアンケートを行うこととなった。そのため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、昨年度の鑑賞行動を尋ねるために、本年度四月上旬にアンケートを実施した。現段階では、これと同様に、次年度の五月上旬にアンケートを実施する予定である。 ただし、次年度の五月上旬までにオーケストラ楽団の財務データが入手できなかった場合、そのデータを入手して分析を一旦行った後に、アンケートを実施する予定である。なぜならば、分析結果如何によっては、さらなる精緻なデータが必要となるかもしれないからである。
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Research Products
(7 results)