2014 Fiscal Year Research-status Report
マンガン酸化物をベースとした新規高活性・高機能空気極触媒の開発
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25870899
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
齋藤 守弘 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20408719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空気極触媒 / マンガン酸化物 / 酸素還元活性 / 酸化耐性 / 酸素発生活性 / 燃料電池 / リチウム空気電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に引き続き、昨年度は特にペロブスカイトLa1-xSrxMnO3-δ(LSxM)及びMnO2ナノシート(Mn-NS)触媒の2つの空気極触媒に対して、更なる高活性化と酸化耐性の向上に焦点を当てて検討を進めた。特に、触媒活性についてはこれまでの酸素還元反応(ORR)活性の評価に加えて、逆反応である酸素発生反応(OER)活性に関する測定法を検討し、これまでに得た触媒について実際にデータ収集を行った。その結果、いずれの触媒においても、比表面積の大きなケッチェンブラック(KB)をカーボン担体または複合カーボンとして用いると、ORRだけでなくOER活性も優れた触媒となることがわかった。これに対し、黒鉛化度の高いカーボンナノチューブ(CNT)では、OER活性の向上は見られないものの酸化耐性の点ではKBよりも優れていた。 各触媒のより詳細な結果としては、LSxM触媒では初年度にMnサイトの一部をFe置換すると触媒粒子の結晶性が向上することを見出したが、OER活性についても若干向上することを明らかにした。更に、CoやNi置換についても検討を行い、上記の通りOER活性ではFeが、ORR活性はCoが元素置換として効果的であることを見出した。現在は、更にFeとCoの双方を置換した三元系触媒についても検討中である。 一方、Mn-NS触媒ではMnO2ナノシート間にKBやCNTのナノカーボンをより均一に高分散する手法について確立し、キャラクタリゼーションや触媒活性の評価を順次進めた。特に、本触媒では得られた試料に熱処理を施すことで、ナノカーボンとMnO2ナノシートとの接合性が改善され、触媒活性や酸化耐性が併せて向上することを見出した。今後、ナノシート状触媒である特徴を利用し、高比表面積、高黒鉛化度で酸化耐性も優れるグラフェンとの複合化により、これらの性能を更に強化することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記したように、各触媒の性能は着実に向上してきており、アニオン交換膜形燃料電池(AEMFC)やリチウム空気電池(LAB)の空気極触媒としての応用を視野に入れる段階にきている。現在、LABセルについては量産・評価が可能なコイン型セルの作製環境を整えつつあり、順次セル作製とその評価について検討していく予定である。また、AEMFCの単セル作製や評価についても東京理科大学の田中准教授のご協力を得て進めていく。来年度は最終年度であり、これらの空気極触媒の更なる性能向上を狙いながらも、セルに組み込んだ際の触媒評価に重点を置き、これらの触媒材料の実用化に向けて、しっかりとその特徴と性能について見極めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究により、触媒合成においては比表面積や黒鉛化度が高いナノカーボンの利用がこれらの触媒との組み合わせにおいて重要であることを見出している。また、AEMFCやLABに適用可能な高い触媒活性が達成できてはいるが酸化耐性を更に改善する必要があることも同時に示唆された。そこで、これらの結果を踏まえ、今後は新規ナノカーボンとしてグラフェンや、より優れた酸化耐性を有する導電性酸化物ナノ粒子の適用も視野に入れて検討していく。 一方、セル作製と評価においては、近年特に次世代蓄電地として期待されているLABセルへの応用についてより重点的に注力し、その性能評価について検討を進めていく。特に、Mn-NS触媒は当研究室における全くのオリジナル触媒であり、その触媒活性も優れることから、実際のセル評価を通じてその充放電メカニズムも含めて学術面及び実用面双方の視点からその触媒としての蓋然性を明らかにしていく。また、これらの研究成果について論文発表や国内外の学会発表、特許出願などに繋げていく予定である。
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