2013 Fiscal Year Research-status Report
セルロースの芳香族ヒドロキシ酸エステル化による高加工性・抗菌性材料の開発
Project/Area Number |
25870921
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 大輔 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (70415074)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | セルロース / 芳香族ヒドロキシ酸 / エステル化 |
Research Abstract |
本年度は研究計画初年度における課題である、セルロースと芳香族ヒドロキシ酸のエステル化条件および芳香族ヒドロキシ酸への保護基導入条件について検討を行った。 芳香族ヒドロキシ酸としてフェルラ酸およびカフェ酸を用い、セルロースを8重量%塩化リチウム・N,N-ジメチルアセトアミド中に溶解させた状態で、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドと4-ジメチルアミノピリジンを触媒としてエステル化を行った。エステル化反応生成物は有機溶媒への溶解性に乏しく核磁気共鳴分光法による分子構造解析が不可能であったので、固体状態での解析が可能な赤外分光法(IR)により分子構造解析を行った。IRスペクトルの解析から、いずれの芳香族ヒドロキシ酸とのエステル化においても、エステル結合の形成を示唆するカルボニル基由来の吸収ピーク増大が観測された。その一方、セルロース由来と考えられる水酸基由来の吸収ピークの減少はあまり顕著には観測されなかった。このことからセルロースと芳香族ヒドロキシ酸の共存下において芳香族ヒドロキシ酸同士の縮合反応が優勢に起こっていることが示唆された。その一方、フェルラ酸とセルロースのエステル化においては、フェルラ酸をセルロース水酸基の10倍モル量添加することで水酸基由来の吸収ピークが大幅に減少したことから、芳香族ヒドロキシ酸をセルロース水酸基に対して大過剰添加することで、セルロースとフェルラ酸のエステル化が可能であることが示唆された。 芳香族ヒドロキシ酸への保護基導入に関しては、フェルラ酸については水酸化ナトリウム水溶液中無水酢酸を用いてアセチル化することで、フェルラ酸同士の重合を抑制した状態でのアセチル化が可能であることが見出された。このアセチル化反応粗精製物中のアセチル化フェルラ酸の純度は80%程度であったが、エタノール中での精製により96%付近までの高純度化に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロースと芳香族ヒドロキシ酸のエステル化反応に関しては、反応系の選定および反応物であるセルロースと芳香族ヒドロキシ酸の仕込み量の最適化は概ね完了した。その一方、エステル化反応時における芳香族ヒドロキシ酸の重合に関しては、これを抑制するための条件検討を引き続き行っていく必要がある。フェルラ酸に関しては重合抑制に有効なアセチル化による水酸基保護の条件が概ね把握できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後アセチル化フェルラ酸とセルロースとのエステル化により、芳香族ヒドロキシ酸重合物を含まないセルロース芳香族ヒドロキシ酸エステルの合成が可能になると見込まれるので、アセチル化フェルラ酸セルロースの合成条件の検討を行う。カフェ酸についても同様の方法で水酸基保護を行い、セルロースとのエステル化条件に関して検討を行っていく。 これらのセルロースエステルに関して現状では赤外分光法が唯一の構造解析手段であるため、核磁気共鳴分光法による分子構造解析に関しても条件検討を行っていく。
|
Research Products
(1 results)