2016 Fiscal Year Research-status Report
神経心理学的検査による発達障害の認知機構とその発達的変化の解明
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25870931
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
加戸 陽子 関西大学, 文学部, 教授 (10434820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 広汎性発達障害 / 注意欠如/多動性障害 / 神経心理学的検査 / ウィスコンシンカード分類テスト / Rey複雑図形 / 実行機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自閉症スペクトラム障害(ASD)/広汎性発達障害(PDD)、注意欠如/多動性障害(AD/HD)およびその双方をともなう子ども(併存)の各種神経心理学的検査による認知特性の検討を目的とする。本年度は以下の点について検討を行った。 ①2010年に導入されたWISC-IVに関し、ウィスコンシンカード分類テスト(KWCST)評価機能との関連性に関する検討を行った。5~15歳の16名のASD/PDDではWISC-IVの「単語」・「理解」および「行列推理」とKWCSTの第1階の6評価指標との間にそれぞれ相関関係を認めた。このことから、ASDではKWCSTの課題遂行過程において、特に言語情報と非言語情報の双方に対する推理力が重要な役割を果たしていること、WISC-IVで新たに加えられた「行列推理」には実行機能を評価する役割を担っていることが示唆された。なお、事例数に関しては十分とは言えず、より多くのデータにもとづく検討による確認が必要と考えられる。②昨年学会において報告を行ったFSIQ90以上の3名のASD児のRey複雑図形検査による描画特性の検討に関し、使用された特徴的な描画方略が図の記憶過程を妨げていること、描画方略には視知覚能力の発達の未成熟さが認められることを指摘するとともに、こうした特徴をふまえた教育的支援の視点に関する報告を論文にとりまとめた。また、主に特別支援関連領域の教員らを対象とした講演においてもこの知見に関する報告を行った。本検査が子どもの抱える学習上の問題の把握に有用であり,神経発達障害における視覚認知能力の実態把握や発達的経過に関するさらなる検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はこれまでと同様にASD/PDD,AD/HDおよび併存例を対象に知能指数や服薬条件、併存症状等の諸条件を統制しつつ知能検査および神経心理学的検査を実施した。AD/HDに関しては服薬条件の関連で例数が十分ではないものの、ASD/PDDおよび併存例でのデータの収集は概ね順調に進んでいる。しかし、本年度後半は所属機関および所属学会での担当業務の多忙により集積データの総合的な分析やその結果をふまえた論文への取りまとめに十分な時間をとることができなかったため、計画に遅れが生じることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに集積したデータをもとに、知能検査および神経心理学的検査にもとづく各種神経発達障害の認知特性について総合的な分析と論文へのとりまとめを行っていくこととする。
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Causes of Carryover |
本研究結果の取りまとめを論文投稿するにあたって必要な経費として翌年度分に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の英文校閲および抜き刷り費用として使用する予定である
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