2014 Fiscal Year Research-status Report
難削材の超精密ダイヤモンド切削における被削性改善技術の確立
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25870932
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80511716)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ダイヤモンド工具 / 摩耗 / 鋼 / 超精密切削 / 炭化物 / 窒化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した研究の主な成果は以下の通りである. 1. 浸炭処理によって析出した炭化物の元素マッピング分析を行い,炭化物の割合・形状・寸法および組成が,工具摩耗抑制と仕上精度向上に及ぼす影響を調査した.その結果,粒界に析出した炭化物と粒内に析出した炭化物では,粒内に析出する微細なV炭化物の割合が多いほど工具摩耗を抑制する一方で,粒界に析出するCr炭化物の寸法が大きく,円形率が高いと工具摩耗抑制と仕上精度向上の効果が減ずることを明らかにした. 2. 窒化処理による工具摩耗抑制効果が高かった鋼について,断続切削における切削距離に対する超精密切削特性を調査した.その結果,切削距離を延ばしてもダイヤモンド工具は緩やかに摩耗が進むのみで,刃先に欠けなどは生じなかった.また,仕上面精度についても大きく荒れることなく推移することが分かった.この結果は,昨年度実施した連続切削と比べても良好で,断続切削による冷却効果で工具摩耗が抑制されたためではないかと考えられる.また,数種のステンレス鋼・耐熱鋼において窒化処理によって析出した窒化物のマッピング分析を行い,元素分布が工具摩耗抑制および仕上面精度に及ぼす影響を明らかにした. 3. 超精密切削加工では,除去量が微小であるため複雑かつ大面積を加工するためには多くの時間を要する.その際、温度変化などの環境による影響を受け,加工精度が悪化する問題があった.そこで、本年度は長時間加工における熱変位の問題を改善し,加工精度を向上させるための補正方法の有効性を確認した.また,これまでは前加工による加工変質層が切削機構に及ぼす影響を考慮していなかった.そこで,弾性回復量が大きい銅単結晶材に対して加工変質層深さの異なる前加工面を作製し,超精密切削を行うことで,弾性回復量に及ぼす影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,(1)浸炭処理により炭化物を析出させた鋼,および(2)窒化処理により窒化物を析出させた鋼の超精密切削特性を実験的に解明するとともに,析出した炭化物および窒化物の元素マッピング分析を中心に研究を行った.また,サブミクロンオーダ切削における加工精度向上のため(3)前加工による加工変質層深さを変化させた単結晶銅の超精密切削時の弾性回復量を調査した.(1)の結果から,析出した炭化物の組成・割合・形状および寸法が工具摩耗と仕上精度に影響を及ぼすことが明らかとなった.また,(2)の結果から,切削方式および窒化物の分布が工具摩耗と仕上精度に及ぼす影響を明らかにした.(3)の結果から,単結晶材料において加工変質層が弾性回復量に及ぼす影響を明らかにした.(1)および(2)の結果から,被削性が改善される要因あるいは悪化させる要因について次第に明らかとなり,工具摩耗抑制と仕上面精度向上による被削性改善を図るための指針が立てられ,(3)の結果からさらなる加工精度向上に繋がる結果が得られたことから,おおむね順調に進展していると評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度の結果をもとに,超精密切削特性を改善する鋼種および熱処理法を開発し,実験的に証明することを行っていく.具体的には,熱処理および浸炭処理により析出させる炭化物を変化させ,工具摩耗抑制と仕上精度向上に及ぼす影響を明らかにする.また,窒化処理による工具摩耗抑制効果の高い鋼における断続切削における超精密切削特性を引き続き調査する予定である.これらの実験が順調に進んだ場合は,長時間加工による微細形状作製を行い,本手法の有効性を明らかにする. 本年度,浸炭処理により炭化物を析出させた鋼は炭化物のみで評価していたが,次年度はその母相についても評価対象としなければならない.一方,窒化処理によって析出した窒化物について,本年度は元素分布のみで評価していたが,次年度はその割合・形状・寸法も評価対象としなければならない.このように,被削性を改善するために,浸炭・窒化する鋼のミクロ組織の改善および3次元的な分析を行うことを予定している.これらの結果をもとに,超精密ダイヤモンド切削時の因果律を導き出すことができると考えられる.
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Causes of Carryover |
今年度前半が在外研究であったため,今年度前半に予定していた国内旅費および外国旅費を使用しなかった.また,切削実験に使用する機器および計測装置の故障が相次いだため,検証実験に至らず,消耗品である超精密ダイヤモンド工具や鋼材の経費の一部を使用しなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
切削実験に必要な工具および被削材の購入を行う.また,国内学会における成果発表および研究成果の論文投稿を行う.
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