2013 Fiscal Year Research-status Report
利他的行動場面における若者からの反応が高齢者の心理的発達と行動に与える影響
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25870956
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田渕 恵 関西学院大学, 文学研究科, 博士研究員 (70631977)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | generativity / 利他的行動 / 高齢者 / 世代間相互作用 / 利他性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,高齢者が若者に対して利他的な行動をとる場面において,若者からの反応が高齢者の心理的発達および行動に,どのように影響するのかを実験的に調べることであった。高齢者の心理的発達としては,Eriksonが第VII段階の発達課題として提唱した「世代性(Generativity)」という概念に着目した。世代性は「次世代を教え導くことへの関心」と定義される。利他的行動としては,「高齢者が過去の経験とそこから得た知恵について教える」という「語り」行動を採用した。高齢者34名を対象に,「語り」を行った際の相手の反応(ポジティブ反応・ニュートラル反応)×「語り」を行う相手の世代(若者・同世代の高齢者)を操作した実験を行った。その結果,相手が若者である場合にのみ相手からの反応の影響が認められ,若者がポジティブに反応した場合は高齢者の世代性が向上し,若者への利他的行動が生起する一方,ニュートラルに反応した場合は高齢者の世代性が低下することが明らかとなった。相手が同世代の高齢者である場合は,相手の反応の影響は認められなかった。また,高齢者の「語り」の質的分析を行ったところ,若者がポジティブに反応した場合に,自分自身の失敗経験を基にした教訓の「語り」が多く抽出された。本研究により,これまで調査研究によって提唱されてきた,若い世代からの反応や態度が高齢者の世代性や行動に与える影響の大きさを,実験的に検証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に実施予定としていた実験は予定通り終了し,研究成果を2本の査読付き学術論文としてまとめることができた。また,次年度の実験計画も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの実験で用いた課題の工夫を行い,より妥当性の高い指標を用いる予定である。これまでの実験では,利他的行動の行動指標が利他性をどの程度反映したものであるかが明確ではなかったため,今後はより利他性を反映した指標を工夫し,さらに厳密な実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度のための予備実験を行う予定であったが,1年目の実験が予定よりも長引いたため,未使額が生じた。 次年度の本実験のための予備実験を行うため,実験参加者および実験協力者の謝金・人件費,実験課題作成のための物品費に使用する。
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Research Products
(6 results)