2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25870959
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
遠藤 知子 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (00609951)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会権 / サードセクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、福祉国家による社会権保障の視座から市民社会組織が福祉サービス供給の主体として政策的・制度的に推進されることによって生じる課題を分析することであった。平成27年度は、公共政策・社会政策分野の国際ジャーナルであるPolicy and PoliticsにChikako Endo and Sang Hun Lim, “Devolving public duties: can the social economy fulfil social rights?”が掲載された(2015年12月, online first, 査読有)。本論文では、まず社会権の理論分析を行い、福祉国家を市民の政治的合意による権利に対する義務負担者として位置づけた上で、ボランタリな資源を活用することによって社会的価値を創造する社会的経済組織によるサービス供給の特徴を整理した。これまで個別に論じられてきたこれらの社会権理論と社会的経済の議論を融合させ、両者の間の対立を明らかにした上で、従来政府が担ってきた社会権に対する公的義務を社会的経済組織が負担または補強する方法として、1)成員同士の水平的な関係が互いのニーズ供給に対する互恵的な義務の規範を発生させる可能性と、2)こうした組織が多様なニーズに対する要求を公共圏につなぐ可能性を提示した。 さらに、主要なサービス供給主体としてサードセクター組織の役割を拡大させることを目指すイギリスの公共サービス改革に関する研究を引き続き進めるため、平成27年9月にイギリス・ロンドンを中心として政府機関、チャリティ組織、社会的投資機関などに対して聞き取り調査を行った。この調査を踏まえてキャメロン政権が目指す新たな福祉ミックスのモデルを提示し、日本語論文としてまとめたものを学会誌に投稿済みである。
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Research Products
(2 results)