2013 Fiscal Year Research-status Report
極端条件下における自動体外式除細動器使用時の安全性に関する研究
Project/Area Number |
25870972
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
堀 純也 岡山理科大学, 理学部, 講師 (70368611)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 自動体外式除細動器 / AED / 出力エネルギー損失 |
Research Abstract |
自動体外式除細動器(AED)は心停止患者の救命のために重要な役割を果たす.迅速な除細動は救命率を上げることから,一般市民がAEDを使用する機会が多くなった.しかし,一般市民は医療機器に精通している訳ではないため,意図せぬ使い方をする可能性がある.そこでパッド間が濡れている状況や高温・低温下などの極端条件下で使用した場合の安全性を検証するために平成25年度はまず,耐水性のある出力エネルギーチェッカの作製を行った.除細動器のJIS規格は廃止されているため国際規格のIEC規格を参考にヒトの胸部の抵抗を模擬した負荷抵抗を複数含む出力エネルギーチェッカを作製した.作製した出力エネルギーチェッカを市販のチェッカと比較したところ,問題なくエネルギーが測定できることを確認した.作製した除細動器チェッカを用いて50Ωの負荷抵抗を対象に生理的食塩水を用いた予備実験を行ったところ,パッド間が濡れている場合には,せいぜい数%のエネルギー低下であることがわかった.ただし,予備実験中にチェッカに生理的食塩水が入り込み,短絡する事態が生じたため,補修と防水対策強化を行った.以上の成果については第3回中四国臨床工学会にて報告を行った.また,更なる詳細を平成26年度に開催される第24回日本臨床工学会および第89回日本医療機器学会においても報告する予定となっている. 平成25年度にはAEDのパッド周囲の温度変化を観測するための感熱色素を用いた人体モデルも作製する予定であったが,エネルギーチェッカの補修に時間がかかり,当該年度には実施できなかった.その代わりにAEDを低温環境下に置いた場合の安全性に関する予備実験を先に行った.予備実験の段階では放電エネルギーに関しては室温の場合と大きな変化はなかったがパッドの劣化が顕著であることがわかった.この内容については,第3回医療電磁環境研究会にて報告を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,当初の計画通り除細動器の耐水性をもったエネルギーチェッカの作製については終わっている.作製した回路が生理的食塩水を用いた予備実験で短絡するなどのトラブルもあったが,修繕および耐水性の強化も行い研究遂行上問題ない状態である.したがって,平成26年度に実施予定になっている「電極パッド間が濡れている場合のエネルギー損失の評価」,「電極パッドが劣化した場合のエネルギー損失」,「高温・低温における出力エネルギー損失」の研究については実施可能な状態である.パッド周囲の温度変化を観測するための準備がまだ進んではいないが,その分,平成26年度に実施予定であった「電極パッド間が濡れている場合のエネルギー損失の評価」および「高温・低温における出力エネルギー損失」の一部についてはすでに平成25年度のうちに予備実験を行っている.前者については平成26年度に開催される第24回日本臨床工学会および第89回日本医療機器学会にて報告予定(すでにそれぞれの学会から演題登録の採用通知を受け取っている状況)であり,後者については平成25年度第3回医療電磁環境研究会(一般社団法人日本生体医工学会)にて概略を報告した. 以上のことから,本研究の進捗状況としては概ね順調に進んでいるといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず平成25年度に実施できなかった「AEDのパッド周囲の温度変化を観測するための感熱色素を用いた人体モデル」の作製を行う.これに関しては寒天培地,生理的食塩水,感熱色素の濃度調整および人体の胸壁の抵抗を模擬した負荷抵抗としてはたらくための抵抗値の調整が必要となる.電気伝導度を上げるためには塩化ナトリウムを用い,電気伝導度を下げるためには透明な樹脂等を混ぜることにより調整を行う予定である.感熱色素を用いた人体モデルの作製を行うのと同時に各種液体(蒸留水,水道水,海水,生理的食塩水,人工透析液,ポビドンヨード)でパッド間を濡らした場合のエネルギー出力測定について研究を行う.平成25年度には一部実施しているが,負荷抵抗が50Ωの場合しか行っていないため,負荷抵抗の値を変えた場合についても実施する. 高温・低温環境下における出力エネルギー変化の評価についてはAED自体を冷蔵庫で冷却した場合やドライオーブンで高温下にさらした場合について実験を行う.高温・低温環境下にさらすとAED自体が故障する可能性もあるが,現在,本研究室には予備を含めて4台のAEDを保有しているため(本研究への申請段階ではAEDを1台しか保有していなかった),万が一の場合のバックアップ体制は整えている. 感熱色素を用いた人体モデルの調整が終わった段階で随時,「電極パッドが劣化した場合のパッド周囲の温度変化の評価」,「電極パッドの面積が減少した際のパッド周囲の温度変化の評価」についての実験を進めていく予定である.パッドの劣化に関しては,最近のAEDのパッドは包装から出しても比較的電極ゲルパッド面の劣化が起こらないような工夫もなされている場合があるので,ドライオーブンに入れたり意図的に高湿度環境を作り出したりして実験準備を行う予定である. 以上の内容を平成26年度に進め,学会やホームページ等で公表していく予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にAEDのパッド周囲の温度変化を観測するための感熱色素を用いた人体モデルを作製する予定であったが,作製した除細動器の出力エネルギーチェッカ内部での短絡によるトラブルが生じたため,その補修に時間がかかり,当該年度には実施できなかった.したがって,感熱色素を用いた人体モデルの作製にかかる予定であった費用が残額として生じたためである. 平成25年度に実施できなかった感熱色素を用いた人体モデルを作製し,その評価を実施するために使用する予定である.使用用途としては,生理的食塩水,寒天培地,感熱色素,抵抗値調整のための樹脂等に充てる予定である.
|
Research Products
(5 results)