2013 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症形成後に対するニコチン刺激のフラッシュバック現象の分子機構
Project/Area Number |
25870974
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
黒川 和宏 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30454846)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルコール依存 / ニコチン / リアノジン受容体 / 報酬効果 / 細胞内カルシウム動態 |
Research Abstract |
アルコール依存症者における喫煙率は 80% を超え、逆に喫煙者におけるアルコール使用障害のリスクは非喫煙者と比較して有意に高く、アルコール依存と nicotine 依存は共存することが知られている。また、アルコールによる身体依存形成にryanodine receptorsが重要な役割を担っていることを明らかにした。本研究では、アルコール身体依存獲得動物を用いて、nicotine 誘発報酬効果形成時におけるryanodine receptorsの関与について行動薬理学的観点から検討した。アルコール身体依存獲得動物を用いて、低用量の nicotine で条件付けを行うことにより生理食塩水処置群と比較して有意な報酬効果が認められた。この報酬効果が腹側被蓋野における nicotinic acetylcholine receptors (nAChRs) α7 subunitを介しているか否かについて、nAChRs α7 subunitの阻害薬である methyllycaconitine を用いて検討したところ、nicotine による報酬効果は、methyllycaconitine の腹側被蓋野に微量注入により用量依存的かつ有意に抑制された。さらに、ryanodine receptors の拮抗薬である dantrolene を用いて同様に処置を行った結果、nicotine による報酬効果は、用量依存的かつ有意に抑制された。以上の結果から、アルコール身体依存獲得後における nicotine 誘発報酬効果形成において、nAChRs α7 subunitを介したryanodine receptorsの活性化が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は、アルコール身体依存形成後におけるニコチンに対する感受性が亢進するか否か、またその亢進に細胞内カルシウム動態の変化が関与するか否かを明らかにすることである。本年度の検討により、アルコール依存後におけるニコチンに対する感受性亢進が認められ、その亢進に細胞内の小胞体にあるリアノジン受容体が関与していることを示唆した。したがって、本研究における達成度は概ね順調に進んでいるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は平成25年度に得られた結果を応用し、アルコール身体依存形成後におけるニコチンに対する感受性亢進に、細胞内カルシウム動態機構を調節すると考えられているリン酸タンパク質の関与について検討を行う。また、ニコチンの感受性亢進に伴うエピジェネティクスの関与についても併せて検討する。さらに、マイクロダイヤリシス法を用いて、側坐核におけるドパミンの遊離量を測定する。これらの検討に関わる基礎的な実験は終了しているため、次年度の研究目的も達成できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として、抗体およびPCR試薬が当初の予定額よりも低価格にて購入が可能となったため。 研究計画に大きな変更はないが、次年度使用額を平成26年度請求額と合わせてウエスタンブロット法に使用するゲルおよび分子量マーカーの消耗品費用として使用する。
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