2014 Fiscal Year Research-status Report
フルオラスかつノンコバレントな相互作用を利用した前処理技術の開発と分析化学的応用
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25870994
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
巴山 忠 福岡大学, 薬学部, 助教 (90549693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分析化学 / 溶媒・固相抽出 / フルオラスケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パーフルオロアルキル試薬によるフルオラス相互作用を利用した生体関連物質の選択的抽出法の開発を試みている。前年度までに、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoroundecylamine試薬をイオンペア剤として用い、低分子リン酸基含有化合物(ヌクレオチド類)を、誘導体化を行うことなく、パーフルオロアルカン類などフルオラス溶媒中に選択的に抽出し得る方法論の開発とその基礎的検討を行った。今年度は、さらに本法の詳細な条件検討を行った後、本法の実試料測定への有用性を検証すべく、適当な細胞試料中におけるヌクレオチド類の選択的抽出を試みた。抽出条件については、前年度に構築した条件をもとに、イオンペア剤濃度、緩衝液濃度及びpH、フルオラス抽出溶媒の組成など詳細に行ったところ、前年度までに若干問題のあったジリン酸類・トリリン酸類の回収率を向上させることに成功した。また、ヌクレオチド類縁体(非リン酸系化合物、アデノシンやcAMPなど)に本法を適用したところ、それらは抽出されなかったことから、本法のリン酸基含有物質に対する選択性を確認することができた。さらに、ヒト乳がん由来細胞であるMCF-7及びMCF-10A細胞に本法を適用した。その結果、それぞれの試料中におけるヌクレオチド類の抽出が可能であり、本抽出法を適用したときのクロマトグラムと、本法を適用しなかった場合のものとを比較したとき、試料由来夾雑物ピークの減少を確認できたことから、本法の実試料測定に対する有用性をも確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載のとおり、今年度は本法によるフルオラスイオンペア抽出法の詳細な条件検討と実試料への有用性を確認した。詳細な条件検討を行ったところ、対象としたヌクレオチド類(AMP、ADP、ATP、GMP、GDP及びGTP)の良好な抽出が可能であり、またその回収率は、モノリン酸類のみならず、ジリン酸、トリリン酸類についても満足できる結果が得られた。さらに、実試料として細胞試料を用い、その内在性ヌクレオチド類の抽出を行ったところ、試料中夾雑成分の影響を受けることのなく、それらの抽出及び分析が可能であったことから、本法の実試料測定に対する有用性が確認された。以上のように、本研究は特段の問題なく、おおむね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き今年度においても、本法の基礎的条件の検討を行ったが、その条件の確立とともに、実試料への有用性についても証明することができた。今後は、本法をさらに発展させるべく、さらに多くの実試料へと適用し、その有用性を詳細に検証していくこととする。また、種々の疾病(例えば、癌など)由来の細胞試料中ヌクレオチド類の測定へと本法を適用し、その測定結果に多変量解析などの統計処理を施して細胞種の違いを明確にする、あるいは、何らかの薬剤処理による変化を同様の方法で明確化するなど、メタボロミクス的解析へと応用していくなどの検討を行う。またさらに、低分子のみならず、リン酸化タンパクやペプチドなどの選択的抽出へと適用するなど、本法の適用拡大を図っていくこととする。
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