2013 Fiscal Year Research-status Report
先住民の自治権に関する研究―カナダの議論を参考にして―
Project/Area Number |
25871002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
守谷 賢輔 福岡大学, 法学部, 講師 (40509650)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 先住民 / 憲法 / 先住民の自治権 / 先住民の土地権 / 先住民法 |
Research Abstract |
カナダにおける先住民の自治権(aborigial right of self-government)の根拠、内容などに関する文献を読了し、学説や先住民指導者らの主張を検討することを試みた。この作業にあたり、とりわけ土地権(aboriginal title)との関連を意識し研究を遂行した。というのは、rightとtitleとの区別を拒否する先住民集団が多く、titleの観念自体が、近代法が前提とするものと異なるからである。すなわち、先住民は土地を自己(self)と一体化した全体論的(holistic)な観念に基づき自治を営んでいるからである。これを踏まえ、各論者が想定している土地権、自治権の異同や、主張の眼目がどこにあるのかを考察した。 そこで明らかにしたことは、自治権および土地権を根拠づける際の先住民法(先住民法は先住民集団ごとに内容に違いがある)の位置づけである。 有力な説は大きく二つのアプローチに分類できる。土地権に自治権を基礎づけるが、土地権の根拠を先住民法とすべきではないというのが第一のアプローチである。これに対し、土地権、自治権ともに先住民法に基づくものだと主張するのが第二のアプローチである。 前者のアプローチをとる論者の見解によると、先住民法は各先住民集団ごとに異なるため、裁判官がそれを審査することは非常に困難であるというデメリットがある一方で、先住民法を根拠にしなければ、いったんある先住民集団に自治権や土地権が承認されると、他の先住民集団にもそれが及ぶというメリットがある。また裁判官が先住民法を審査することにより、先住民法が近代法という異なる概念に取り込まれてしまう危険性を指摘する。後者のアプローチは、この危険性を認識しながらも、先住民法に基礎づけないことは、先住民法を含んだカナダ法により国家は成立していることの承認を阻むと主張する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先住民の自治権の根拠などを整理し、さらに土地権との関連づけを検討した結果、先住民法の位置づけの違いが非常に重要な論点であることを明らかにしたが、主要な見解をまとめるに留まり、他の学説の整理が不十分であることから、研究の達成度はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
先住民法の位置づけに関する各論者の見解をさらに深く掘り下げて検討していく。この作業を遂行するには、土地権の根拠論がより一層重要であり、この研究をしなければ、非常に浅薄な成果に終わると認識した。そのため、当初の予定では、平成26年度に、自治政府にカナダ憲章を適用することの妥当性を検討するつもりであったが、時間の許す限りというかたちにとどめ、土地権の根拠論の考察を優先する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者は現在、在外研究中であるところ、平成25年の講義(9月初旬~12月初旬)終了後、平成26年の講義(1月初旬~4月初旬)の間の休み期間を利用し、欧米もしくは中南米に訪問し多国間比較先住民研究を遂行するか、またはカナダ国内の先住民のリザーブなどの現地実態調査を行う予定であったが、平成26年の講義に備えるために必要な時間が予想以上に必要であったため、出張をとりやめた。 文献の渉猟を引き続き行いながら、カナダ国内出張においては現地実態調査を遂行する。欧米・中南米諸国出張においては、多国間比較先住民研究をすることで、カナダとの相違を確認する予定である。
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