2014 Fiscal Year Research-status Report
ヴィゴツキーの児童学理論を中心とした子どもの社会文化的移行に関する基礎的研究
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25871008
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
岡花 祈一郎 福岡女学院大学, 人間関係学部, 講師 (50512555)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 移行 / 保幼小連携 / ヴィゴツキー / 児童学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヴィゴツキーの児童学理論の整理と分析、および、就学移行についてのカリキュラムの国際比較研究を行った。前者については、雑誌『児童学』の翻訳およびその内容の整理を行い、特に環境と人間の関係性の変容をとらえる枠組みとして、ヴィゴツキーの「心的体験」の概念を中心に検討を行った。ヴィゴツキーは環境を変数として捉えるだけではなく、環境と人間の関係性の変化に着目しようとした。就学は単なる環境の変化だけではなく、個人と教師との関係性や学びへの姿勢など子どもの発達の社会的状況が変容していくことで新しい「心的体験」として経験が新しくされていくと理解されるという点が明らかとなった。 また、後者のカリキュラムに関する国際調査については、2014年オーストラリアで開催されたISCAR International Congress 2014に参加して情報交換を行った。特に社会文化的アプローチに造詣が深く、幼児教育が専門であるMarilyn Fleer氏(Monash University大学)から、小学校への接続についての情報提供を受けた。特に社会文化的アプローチにおける「動機」の問題についてや、乳幼児の子どもとICT環境などについてオーストラリアのカリキュラムの最新の知見を入手することができた。アメリカの就学移行カリキュラムであるTools and Mindプログラムについても引き続き分析を進めている。 以上の研究成果は学会発表とともに図書として刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、文献収集のためロシア渡航を考えていたが、ヴィゴツキーの文献については国内からアクセス可能であったことと、モスクワの矯正教育研究所所長のマロフェーエフ氏の尽力により入手することが可能となった。その代りに、オーストラリアで開催されたヴィゴツキーおよび社会文化的理論に関する国際学会(ISCAR International Congress 2014)に参加して情報収集を行った。 研究成果発表については、論文としては十分にまとめきれていないが、学会発表として4件、図書として2件発表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、就学前施設から小学校への移行、そして、小学校内の学童保育(放課後児童クラブ)へのフィールドワークを中心に実践研究へとシフトしていきたい。特に、小学校への接続に焦点を当て、研究成果をまとめて発信していきたいと考えている。また、同時にヴィゴツキーの児童学に関する知見の再検討を通して理論的な側面も成果としてまとめていきたい。発表先としては、国際学会としてEECERA(ヨーロッパ乳幼児教育学会)での発表と、論文としては保育学研究、乳幼児教育学研究への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
年度末の日本発達心理学会第26回大会(2015年3月20日-22日)への出張旅費宿泊費や消耗品費等の支出が年度をまたいでの手続きとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本発達心理学会第26回大会の出張旅費等として支出した。
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