2013 Fiscal Year Research-status Report
天然化合物特異的モノクローナル抗体による生薬成分の標的分子解明
Project/Area Number |
25871011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
宇都 拓洋 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (90469396)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天然化合物特異的モノクローナル抗体 / 生薬成分 / 標的分子 / ケミカルバイオロジー / バイカレイン |
Research Abstract |
平成25年度はオウゴンの主要生理活性成分であるバイカレイン(BE)の標的分子同定と作用機序解析を行った。オウゴンの主要生理活性成分であるバイカリン(BI)及びBEを用いて炎症マーカー及び癌細胞増殖への影響を調べた結果、BEはBIに比べて強い抑制能を示した。抗BI/BE特異的モノクローナル抗体(抗BI/BE-mAb)用いたImmunocytochemistry (ICC)によりBEの細胞内局在を確認したところ、HepG2においてBEは細胞質内のドット状のオルガネラに局在することが示唆された。BEの標的分子同定を目的として、抗BI/BE-mAbを一次抗体としたWestern Blotting (WB)により、BE処理したRAW264及びHepG2のセルライセートの解析を行った。両細胞株のBE処理細胞由来のセルライセートにおいて約70kDaのBE結合タンパク質が検出された。さらに、BE処理細胞から調整した細胞画分を用いたWBから、BE結合タンパクは主に膜/オルガネラ画分に局在していることが分かり、この結果は抗BI/BE-MAbによるICCの結果と一致した。一方、BI処理したセルライセート及び細胞画分では、BI結合タンパク質は検出されなかった。これらの結果から、BEは膜/オルガネラ画分に局在する約70kDaのタンパク質と特異的に結合していることが示唆された。さらに我々はBE標的タンパクを同定するために、BE結合セファロースを作製し、HepG2由来セルライセートとインキュベート後、プルダウン法によりBE結合タンパク質の回収し、電気泳動により分離することでBE標的タンパク質の単離を試みた。しかしながら、CBB染色の結果、約70kDaにバンドは検出されなかったことから、in vitro条件下ではBEはBE標的タンパク質に結合しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の成果として、抗BI/BE特異的モノクローナル抗体(抗BI/BE-mAb)を用いたImmunocytochemistryによりバイカレインの細胞内局在を解明し、さらにWestern Blottingによりバイカレインの標的分子が膜/オルガネラ画分に局在する70kDaのタンパク質であることを解明した。この結果は、抗天然物モノクローナル抗体を用いることで生薬成分の標的分子同定に繋がる初の報告である。これまでの低分子化合物の標的分子同定法のひとつとして、目的とする低分子化合物をセファロースに結合させプルダウン法により標的分子を特定する方法があるが、我々の方法は、非特異的な吸着による標的分子の偽陽性を防ぐ方法であるため、より生体内での現象を反映している手法であることも平成25年度の研究成果で示唆された。 本研究成果の学会発表が優秀発表賞を受賞した(2013年11月第5回食品薬学シンポジウム)。さらに本研究内容を含む研究課題が、日本薬学会九州支部学術奨励賞を受賞した(2013年12月)。
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Strategy for Future Research Activity |
バイカレインの標的分子が膜/オルガネラ画分に局在する70kDaであることまでは解明されているが、タンパク質の同定までには至っていない。現在も研究進行中であるが、平成26年度は、BE標的タンパク質の同定が最優先事項である。標的分子同定後、さらなる分子メカニズムの解明とバイカレインとのバインディングシミュレーションを行う方針である。さらに、動物個体レベルでのバイカレインの挙動解析を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、平成25年度内にバイカレイン標的分子の単離および標的分子同定のための質量分析等まで行う予定であった。しかしながら、抗体を用いて標的分子を免疫沈降するための条件設定に予定よりも時間を費やした。現在、免疫沈降の手法を変えることにより改善が見られているとともに、アフィニティーカラム等による標的分子の単離も試みている。よって標的分子単離精製や質量分析への経費が未使用のままである。 現在、バイカレイン標的分子の単離法を試行錯誤しており改善が見られている。バイカレイン標的分子を単離精製し次第、ただちに質量分析等による標的分子同定に関する研究に着手する予定である。未使用経費は標的分子同定研究に充てられる計画である。
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Research Products
(3 results)