2014 Fiscal Year Research-status Report
天然化合物特異的モノクローナル抗体による生薬成分の標的分子解明
Project/Area Number |
25871011
|
Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
宇都 拓洋 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (90469396)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 天然化合物特異的モノクローナル抗体 / 生薬成分 / 標的分子 / ケミカルバイオロジー / バイカレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、天然化合物特異的モノクローナル抗体(MAb)をツールとして生薬成分の生体内への吸収・組織内への取り込み、細胞内蓄積、最終的な標的分子に至るまでの生薬成分のダイナミックな全体挙動を明らかにすることを目的としている。本研究室で作製した天然化合物特異的MAbを用いて、各種細胞系および疾患モデル動物を軸に研究を行う。 平成26年度は、①オウゴンの主要活性成分であるバイカレインの標的分子の解析、②甘草フラボノイドのリクイリチン及びリクイリチゲニンの細胞内挙動解析、③他の生薬成分への発展研究を中心に研究を進めた。 ①バイカレインの標的分子特定:初年度の解析の結果、オウゴンの主要活性成分であるバイカレインが抗炎症や癌細胞増殖抑制効果を発揮すること、さらにバイカレインが細胞質内の約70kDaのタンパク質に特異的に結合していることを見出した。この標的タンパク質の同定のために、バイカレインに対するMAbをツールとして免疫沈降やアフィニティーカラムにより標的タンパク質の精製条件を検討した。 ②リクイリチン及びリクイリチゲニンの細胞内挙動解析:甘草フラボノイドのリクイリチン及びリクイリチゲニンに対するMAbを用いて細胞内挙動解析を行った。種々の細胞を用いた解析の結果、リクイリチン及びリクイリチゲニンは細胞内には入らず、細胞膜レセプターに作用することが示唆された。 ③他の生薬成分への発展研究:当初の計画通り、①の研究手法をモデルとして他の生薬成分の標的分子の同定を行うことを目標とし、細胞内品質管理機構を制御する生薬成分の探索と作用機序解析をスタートした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイカレインに関する研究結果より、天然化合物特異的モノクローナル抗体(MAb)を用いることで細胞内の生薬成分の局在や挙動、さらに標的分子の同定まで可能であることが明らかになった。本研究成果は、第5回食品薬学シンポジウムで優秀発表賞を受賞、さらに第30回九州支部会学術奨励賞を受賞している。さらに本年度はこれらの成果の一部が薬学雑誌に掲載された(Yakugaku Zasshi, 134(10):1061-7, 2014)。また第19回日本フードファクター学会(2014年11月8日)で英語口頭発表した。 さらにリクイリチン及びリクイリチゲニンをはじめ、他の生薬成分でもMAbを用いた解析を進行しており、バイカレインに関する研究成果をモデルとして研究の更なる発展に努めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
バイカレインの標的分子同定に向けて、免疫沈降やアフィニティーカラムにより標的タンパク質の精製条件を検討したが、平成27年度は標的分子の同定を早急に進める。標的分子同定後、速やかに詳細な作用機序解析を行う。 また動物個体レベルでのバイカレインの分子挙動解析も進める。 他の生薬成分での発展研究をすでにスタートしているが、本研究室では、ベルベリン、ジンセノサイド代謝物、グリチルリチン代謝物に対する抗体も保有しているので、これらを用いた解析も同時進行する。
|
Causes of Carryover |
当初計画では、平成26年度に動物レベルでの機能解析を行う予定であった。しかしながら、平成26年度は、天然化合物特異的モノクローナル抗体を用いた細胞レベルでの研究を幅広く進めることで、抗体の有用性を確実なもとのすることに力を入れた。よって次年度使用額のすべては動物実験に用いるもので未使用のままである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞レベルでの抗体の有用性が確実に証明されたので、平成27年度は動物実験を速やかにスタートし、抗体を用いた種々の解析を行う計画である。
|
Research Products
(2 results)