2014 Fiscal Year Research-status Report
鋳肌を有する球状黒鉛鋳鉄鋳造品の渦電流法による非破壊評価手法の開発
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25871025
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
堀川 紀孝 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 准教授 (80344480)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 金属生産工学 / 非破壊試験 / 鋳造 / 渦電流試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は(1)基地組織の異なる球状黒鉛鋳鉄における信号変化と表面加工の影響,(2)薄肉球状黒鉛鋳鉄の鋳肌からの組織分布評価の試行,(3)周波数掃引式渦電流信号測定システムの製作,を行った. まず正面フライスによる加工において切削速度および送り速度を変えた試験片を作製し,渦電流探傷器を用いた渦電流試験を行った.切削速度が大きいほど基準試料,ここでは試料切断機切断面の渦電流信号との差が大きい.これは,表面粗さよりも切削加工により導入された表面近傍の残留応力の影響であると考えられる.試験的な残留応力の測定を行い, 型削りでは30MPa,フライス加工では70MPa程度の残留応力が生じており,焼鈍後の試験片では前者が10MPa程度まで低減されていることを確認した.加工条件による信号の変化量は,パーライト率の大きく異なるFCD450とFCD600の信号変化に比べると小さいけれども,鋳造品の肉厚等により生じる組織の変化を評価する際にはその精度への影響の検証が必要である.さらに同じ切削条件であっても,切削工具が摩耗している場合には,切削速度による信号変化が大幅に大きくなることが示された. 25年度に製作したプローブを同じく26年度に製作した渦電流試験装置にて1~100kHzの試験周波数にて試用たところ,5kHz以下では十分な信号強度が得られず,試験体の状態の差を判別できなかった.10~50kHzの範囲での使用が適正と考えられる. この渦電流試験装置を用いて,薄肉の球状黒鉛鋳鉄試験片の鋳肌表面における渦電流信号を測定した.鋳肌を介した測定により肉厚3mmと2mm部の基地組織の差(パーライト率),ならびに試験片の一部に晶出したチル組織の有無を渦電流信号上で弁別できた. また,励磁コイルに印加する電流の周波数掃引を行いながら測定するシステムを製作し,プローブならびに試験体の周波数による信号変化の測定を可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試験片の製作と測定についてはおおむね予定通り進捗している.加工方法(砥石切断,バンドソー,フライス切削),加工条件(切削速度,送り速度)による渦電流信号の変化の幅と,基地組織の差による変化の範囲を明らかにしつつある. 加工条件による信号の変化は表面粗さと残留応力の効果と考えられ,加工後の試験片および焼鈍後の試験片の残留応力の測定を行い,焼鈍により測定面の残留応力が低減していることを確認した.25年度の測定において,焼鈍による信号変化は表面粗さの差によるものと比べて大きいことから,残留応力の影響が大きいと判断された.以上の結果から,渦電流信号による基地組織の評価において,その精度を確保する表面の状態の範囲を提示できる目途がついた. 薄肉球状黒鉛鋳鉄の測定により,鋳肌の上からでも肉厚による組織の変化やチル組織の晶出を検出できることを示した.今後は加工試験片との比較を行う. また,プローブの周波数特性について調査するシステムも構築し,今後のプローブ製作ならびに測定条件の設定に用いる ただし,試験片の製作や測定,ハードウェアの製作に時間を割いたため,シミュレーションの本格的な利用には至っていない.現在,電磁界シミュレーションソフトを導入し,その習熟とモデリングに取り組んでおり,この点で少し遅れが生じている.また,それに伴い,シミュレーションを用いたプローブの開発よりも製作したプローブによる試験体の評価に重点を置いて研究を実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は最終年度であるため,異なる性状の表面からの組織評価に適したプローブならびに測定手法の開発と評価を行う. プローブは現状の上置型を基本とするが,コアを用いて試験体内に磁気回路を作るようなプローブも試作する.26年度に導入した電磁界シミュレーションにより,コイル周囲の磁界,試験体中の磁界と渦電流分布を求め,鋳肌を想定した表面層の影響が相対的に小さくなるような(例えば基地組織の変化の検量線に対して±10%以下)励磁条件やコイル特性を検討する.その結果を参考にコイル巻き数等を決定する.26年度に製作した周波数掃引による渦電流信号測定を行い,組織による信号変化に対する周波数の影響を検討し,組織評価に適した試験周波数を決定する. 鋳肌,機械加工面,それぞれに対して,(1)表面性状の影響を考慮した渦電流組織評価の精度,ならびに(2)組織評価のために目標とする精度を実現するために必要な表面性状の範囲,を明らかにする.なお,渦電流探傷器を用いることで,試験体の状態の差を感度良く検出できるが,標準試験片が必要であること,また,標準試験片自体の加工状態による影響が残ることから,25~26年度製作の渦電流試験装置により標準試料を用いない評価を目指す.
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Causes of Carryover |
機械加工試験片の残留応力測定については,試験的な測定の段階であり,その場合の費用が発生しなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度作成した試験片の残留応力測定を27年度にまとめて実施する予定である.
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Research Products
(2 results)