2013 Fiscal Year Research-status Report
形状記憶合金人工筋肉アクチュエータを用いた小児用前腕動力義手の研究開発
Project/Area Number |
25871041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
谷口 浩成 津山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00508955)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 前腕動力義手 / 小児 / 形状記憶合金 / アクチュエータ |
Research Abstract |
本研究の目的は,独自に開発した形状記憶合金人工筋肉アクチュエータ(以下,SMAアクチュエータ)を用いることで,日常生活での基本動作と小児の要求を達成する小児用前腕動力義手を開発することである.そして,義手要素開発技術と駆動メカニズムの確立し,本義手の有用性を実証する. 平成25年度は, SMAアクチュエータを開発し,これを駆動源とした小児用前腕動力義手を設計試作した.手指の開閉動作実験では,伸展稼働時間が4.3秒および屈曲稼働時間が2.3秒であった.手首および前腕の可動実験では,目標とした各動作角度に対して約半分の結果が得られた.また,手指の動きが滑らかでないことやSMAアクチュエータの復元力が十分でないことも明らかとなった.これらのことから,本義手の構造変更およびSMAアクチュエータの駆動後の放熱や応答性の問題に対する改善が必要であることがわかった. 上記の結果を踏まえて,SMAアクチュエータの改善を試みた.すなわち我々は,フッ素系不活性液体を冷媒に用いた冷却機構を有するSMAアクチュエータを考案し,試作を通じて本アクチュエータの発生力特性および冷却特性を明らかにした.発生力特性は,冷媒がない条件で最大46N, 冷媒がある場合の条件で最大21Nの発生力が得られた.冷媒がない場合に比べて発生力は低下したが,SMAに発生する過剰な熱量を抑えられることを確認した.また冷却特性は,発生力を10Nで停止したとき,冷媒がない場合では411.4秒,冷媒がある場合では69.3秒の冷却時間が得られた.冷媒がある場合では,冷媒がない場合に比べて,約1/6時間で冷却されており,大幅な冷却時間の短縮が期待できることが確認できた.そのためフッ素系不活性液体を用いた強制冷却は,SMAに伝わる過剰な熱量を抑え,SMAアクチュエータの応答性の向上に有効であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,平成25年度の目標は,SMA人工筋肉アクチュエータの開発と小児用前腕動力義手の設計であった.SMA人工筋肉アクチュエータは,複数のタイプを試作し,駆動評価実験を通じて,応答性が低いことを明らかにした.そして,それを改善するために冷却機構を有するSMAアクチュエータを考案し,応答性の向上に有効であることを確認した.小児用前腕動力義手の設計では,手指の動かし方や必要な把持動作,手首関節および前腕部の機能と構造検討を行い,基本設計だけでなく試作して構造の評価を実施することができた.これらのことから,おおむね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,冷却機構を有するSMAアクチュエータを組み込んだ小児用前腕動力義手を試作する.このために,義手の構造を再検討すると共に,SMAアクチュエータの制御手法を検討する. 義手はSMAアクチュエータを手の内部に格納し,制御回路および電源を前腕内部に格納する.また,SMAアクチュエータには,冷却用の冷媒を循環させるチューブやマイクロポンプも必要となり,これらの部品も前腕部分に格納できるように設計する.手首の構造は,当初SMAアクチュエータを用いて能動的な駆動制御を考えていたが,小児が義手を扱う上で,できる限り操作をわかりやすく簡便にすることが望ましいと思われる.従って,手首は力や負荷が加わることで可動できるような構造とし,シリコーンゴムを使うことで触れても危害を加えないような構造とする. SMAアクチュエータの制御は,研究計画では筋電位センサを用いることを考えていたが,筋電位センサ用いるためには,腕の切断部位付近の筋肉から発する筋電位を自分の意志で操る必要があり,このことは小児が実現するにはかなりの訓練を要する可能性が高いと考えられる.従って,別の制御手法として,音声や視線や健常側の腕および手など小児の体を使うなど,多方面から適した制御手法を模索していく. 平成27年度は,平成26年度で改良した小児用前腕動力義手を用いて,日常生活での使用を想定したモデルケースにより,義手の操作性,装着性,耐久性等を総合的に評価し,その有用性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SMAアクチュエータおよび小児用前腕動力義手の試作において、予定した材料が一部変更したことや、設計の見直しにより予定していた材料よりも少ない材料で製作することができたため。 研究計画の見直しにより、SMAアクチュエータおよび小児用前腕動力義手の試作材料、部品、SMAアクチュエータの制御システムの構築および新しい機能性材料(形状記憶ポリマーなど)の購入に使用する。必要に応じて評価試験に用いる装置の購入を行う。また、研究代表者および協力者の成果発表や調査研究の旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)