2013 Fiscal Year Research-status Report
機関室ウォークスルーシミュレータの開発と船員教育での応用
Project/Area Number |
25871046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
向瀬 紀一郎 弓削商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60408721)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 商船学 / 仮想現実感技術 / eラーニング |
Research Abstract |
商船高等専門学校や海運会社における,機関系の船舶職員(機関長や機関士)の教育訓練システムを,より効果的かつ効率的なものへと発展させること,また,外洋を航海中の船舶における,機関系のアクシデントやインシデントへの対応を陸上よりサポートする安全管理システムを,より迅速かつ的確なものへと高度化することを目的とし,低コストで現実感に富む機関室シミュレータの開発に取り組んだ。 最初に,弓削商船高専の運用する練習船「弓削丸」の機関室内の実写画像を収集し,その画像データと仮想現実感(VR)技術を応用して,機関室を歩き回るかのような体験を再現するシミュレータの開発に取り組んだ。また,そのシミュレータの画面表示に,機関室内の各機器の名称や説明文などの教育コンテンツを盛り込み,学生の自学自習にも活用できるような教材となるよう工夫に取り組んだ。 その成果物をインターネットで公開した。これによって,船舶職員を目指す商船学科の学生たちが寮や自宅から,家庭用の一般的なパソコンを使って,練習船実習の予習復習を自由に試すことのできる環境を,低コストで実現した。また講義において新しいシミュレータを活用し,アンケート調査によって教育効果と適合性を測定した。 さらに,実写画像データを高密度かつ高効率に収集するため,自動撮影ロボットの開発に取り組んだ。まずは,自動撮影ロボットを構成する要素のひとつである自動回転ジンバルの試作に取り組んだ。これはカメラの視点を固定しつつ方向を変えながら,複数の画像を自動的に撮影するための装置である。カメラの方向を正確に制御できるよう,ジンバルを自動的に回転させるためのモータに,サーボモータを採用した。 また,他の高専の運用する練習船の機関室の実地調査と,それらにおいて行われている先進的な教育に関する情報収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレータの開発は順調に進んでいる。またシミュレータの教育効果の測定についても予定どおり実施できている。さらに,シミュレータの試作物を既にインターネットで公開することができている状況は,当初の計画以上の進展である。 一方で,自動撮影ロボットの開発は少し遅れており,ロボットを構成するサーボモータの制御システムを構築する作業が,当初の計画において予定していた段階に達していないと考えている。ただし,今後の作業の中で取り戻すことのできる程度の遅れと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自動撮影ロボットの開発と製作には,弓削商船高専の技術職員と,専攻科生2名の協力も得ながら取り組む。また必要に応じて,高専ロボットコンテストに関わっている教員たちにも助言を依頼する。自動回転ジンバルに加え,自動走行ドリーを開発することにより,撮影の地点を自動的に移動させ,高密度な視点からの大量の画像データを効率よく得ることができるロボットの完成を目指す。完成した自動撮影ロボットを携えて,他の高専の運用する練習船を訪問し,それらの機関室の撮影作業を,弓削の専攻科生による補助を得ながら実施する。 また,シミュレータのプログラム部分の精度と機能の向上にも取り組む。多数の画像データをコンピュータによって比較することで,被写体の位置や撮影の視点を,統計的最適化の手法によって逆算し,機関室内の機器の3次元の座標を高い精度で仮想空間に再構成する。これにより,機関室内の細部の名称や,隠れた配管等の形状を示す図や,機器の動作の様子を示すアニメーションを,実写画像に正確に重ねて表示する機能を実装し,シミュレータの教育効果を高める。 改良されたシミュレータの最新版は常に,ウェブアプリケーションとしてインターネットで公開し,学生が寮や自宅のパソコンから利用できるようにする。また,引き続き弓削商船高専の授業や実習の中の,より幅広い場面で,タブレットコンピュータ等を用いてシミュレータを活用し,その教育効果を無記名のアンケートによって測定し,その結果に応じてシミュレータを改良していく。この開発と運用のPDCAサイクルによって,船舶職員の教育訓練システムへの,機関室シミュレータの適合性の向上方法について,効果的に研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
自動撮影ロボットの開発が少し遅れており,ロボットを構成するサーボモータの制御システムを構築する作業が,当初の計画において予定していた段階に達していないため,ロボットを構成する部材の一部が未購入である。 また,他の高専の運用する練習船の機関室の実地調査を,他の用務での訪問の機会に併せて実施することができたため,予定していた旅費の支出を行わなかった。 自動撮影ロボットの開発の遅延は,今後の作業の中で取り戻される予定であり,サーボモータの制御システムの構築が進んだ後は,ロボットを構成する部材の追加購入が必要となるため,物品費の支出を計画している。 他の高専の運用する練習船の機関室の実地調査については,今後はさらに対象を広げて調査を実施する予定であるため,旅費の支出を計画している。
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