2014 Fiscal Year Research-status Report
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25871055
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山崎 大 茨城大学, 大学教育センター, 准教授 (90531822)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原初磁場 / 宇宙背景放射 / ビッグバン元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙に存在する元素は、ビッグバン元素合成によりそのほとんどが合成された。ビッグバン元素合成で決まった軽元素組成は、宇宙の再電離、恒星進化や超新星爆発、それらに影響を受ける宇宙の化学進化を決めるにに重要な要素である。バリオン対光子比は、ビッグバン元素合成を特徴づける重要なパラメータの一つである。近年、宇宙背景放射の観測からバリオン密度比を制限することで、バリオン対光子比を制限できるようになり、バリオン対光子比による原初磁場を含めた様々なビッグバン元素合成モデルの検証が可能となった[Yamazaki & Kusakabe, PRD. 86, 123006(2012)]。 観測の向上や理論の進展にも関わらず、恒星の観測から推定できるリチウム7量と, 標準的なビッグバン元素合成から予想される リチウム7量との乖離が解決できず、リチウム7問題と呼ばれている。 現在、ビッグバン元素合成直後の光子冷却や、ダークマター候補であるX粒子による光分解反応、原初磁場等を考慮した新しいモデルによって、この リチウム7問題の解決に向けた研究が盛んに行われている。 このような背景のもと、当研究は、そのダークマター候補の一つであるX粒子、光子冷却、および原初磁場を組み合わせることにより、自然な形でリチウムを観測範囲まで減少させることができることを解明した。また、最新の観測によって制限された宇宙の軽元素組成の結果と、この新しいビッグバン元素合成モデルから算出した理論値と比較して、リチウム7問題が解決できる原初磁場およびX粒子のパラメータを探し出した[Yamazaki, et al., PRD. 90, 023001 (2014).]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、アクシオン, X粒子、原初磁場のパラメータを理論計算と観測で制限されているヘリウム4や重水素等の元素組成を比較して制限し、そのパラメータ範囲内で、観測されているリチウム7量が生成可能かどうか調査し、その成果を論文として発表できたから.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)原初磁場のパラメータと起源の複合的制限および原初磁場を考慮した物理現象の定量的考察 各々の原初磁場生成モデルで予想される空間分布と振幅を当研究で制限したパラメータと比較し、原初磁場生成モデルを選別、必要があればモデルを発展させて合理的な生成モデルを再構築する。また、制限された宇宙論パラメータと各スペクトルモデルごとの原初磁場のパラメータ範囲で、以下のように原初磁場を考慮した定量的研究を進める。 a.先行研究では初期密度場にパワーロウの原初磁場を考慮してニュートリノの質量を制限した。当研究では、さらに宇宙背景放射の観測データを用い、原初磁場のスペクトルモデルは、パワーロウに加え対数正規分布関数も考慮して研究を進め、宇宙論的観測からのニュートリノ質量の制限を更新する。 b.原初磁場の影響を考慮した背景重力波の振る舞いを定量的に考察し、現存する重力波観測機器の許容強度から得られる上限値と比較し、将来の背景重力波の直接観測のための指標を考察する。 c.制限された原初磁場の範囲で、初代天体の形成論を定性的・定量的に考察する。
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Causes of Carryover |
2015年2月1日付けで茨城大学に異動したが、異動に伴う科研費の移動の手続き上、システム的に実質12月から1月の二ヶ月間、予算を使用することが出来ず、結果的に、計算機を一台購入する計画が実行できなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に購入予定であった計算機一台に、次年度使用額をあてる。それ以外は計画どおり予算を執行する。
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