2014 Fiscal Year Research-status Report
博物館展示の再編過程の国際比較による「真正な文化」の生成メカニズムの解明
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25871066
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
太田 心平 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 准教授 (40469622)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会文化人類学 / 韓国・朝鮮研究 / 博物館展示学 |
Outline of Annual Research Achievements |
4月から1月にかけて、米国と韓国の博物館に関する聴き取り調査をおこない、その結果を3月の国際会議にて発表した。 今年度は特に、韓国・朝鮮の伝統文化を展示する際に、どういった階層の人びとの文化を展示することが相応しいと考えられるかという問題に着目し、研究を進めた。韓国・朝鮮の「真正な」文化の具現としてもっともよく語られるのは、(旧)在地士族層という人びとである。このため、博物館の文化展示でも、(旧)在地士族層の文化を表象しようというものが、20世紀には多く作られた。ただ、21世紀の韓国・朝鮮研究者たちはこれに異議を呈するようになった。背景には、(旧)在地士族層とはかなり違った特徴をもつ(旧)在京士族層についても研究が進んできたこと、そもそも(旧)士族層が韓国・朝鮮で少数者に過ぎないという認識が広まったことなどがある。 しかし、(旧)在地士族層に関する展示を韓国・朝鮮の文化展示から外すことは、容易なことといえないことが、本研究から確認できた。理由は第一に、博物館を訪ねる観覧者たちが「お決まりの」韓国・朝鮮の文化展示を期待するため、それを逸脱した展示は期待を裏切ることになるからだ。また第二に、21世紀の研究潮流を識らない同僚たちが、韓国・朝鮮研究を専門とするキューレーターたちの計画に待ったをかけることがあるからである。そして第三に、(旧)在地士族層以外の人びとが、展示されることを望まないことが多いからである。 上記の第一の理由は、「文化の監査」という問題系として、社会文化人類学で議論されてきたものに属する。第二の理由は、専門性への介入の問題として、産業社会学で語られてきたものと、節合点を有する問題であるといえた。そして第三の問題は、これまでほとんど注目されることがなかったものの、文化展示がいかに作られるかという議論に欠かすことが出来ないものとして、本研究から発信できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、展示対象の選定過程について、意図していなかった発見があった。これを即座に国際会議で発表できたことは、大きな成果であった。 だが他方で、本研究の当初計画は、博物館内部の人間関係が展示にどう反映されるかを明らかにするというものである。昨年度はそれを達成してきた。その実績のうえに立つ成果を今年度に公刊できなかったことも、事実である。
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Strategy for Future Research Activity |
博物館内部の人間関係が展示にどう反映されるかを明らかにするという当初計画に、本年度に明らかになった「展示されたくないという当事者集団の存在」を節合させることが、次年度の目標となる。それにより、当初計画を十分に遂行しつつも、それ以上に充実した成果をあげることが出来るようになるものと期待される。
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Causes of Carryover |
米国での現地調査の予定(1回分)を、現地の研究対象者の都合により、次年度以降に延期することとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に現地調査のための旅費として執行する。
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