2015 Fiscal Year Research-status Report
博物館展示の再編過程の国際比較による「真正な文化」の生成メカニズムの解明
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25871066
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
太田 心平 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 准教授 (40469622)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会文化人類学 / 韓国・朝鮮研究 / 博物館展示学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、4月から1月にかけて、米国と韓国とカナダの博物館の展示に関する調査をおこない、その結果を1月の国際ワークショップと3月の国際学会にて発表した。 この期間に進めた研究は、韓国・朝鮮の伝統文化を展示する際に、どういった基礎資料が使われるのかに着目したものである。韓国・朝鮮の「真正な」文化をどう定義するかは、本研究のこれまでの結果により、その作業を担当する者の裁量によるところが大きいことがわかっている。しかし、その作業を担当する人物は、研究者だけと限らない。現地人とも限らない。先行研究で軽視されてきたこの点について、そういった基礎資料の作成をになうアクターはどういった人びとでありえるのか、そのアクターの属性の差によりどのような「真正な」文化が展示されることになるのかを明らかにすることが、今年度の課題となった。 今年度は、特に韓国・朝鮮の陶磁器の展示に着眼し、どういったアクターが「真正な」陶磁器文化の基礎資料を提供するのか、アクターの差によりどのように多様な展示がありえるのかを調べた。具体的には、美術史研究においてもっとも指示を得ている韓国・朝鮮の陶磁器の4カテゴリーにそって構成された展示(ロイヤル・オンタリオ博物館など)、日本の民藝運動の言説にのっとって知識人や収集家が作り上げた朝鮮白磁を偏愛する展示(インターナショナル・ミンゲイ・ミュージアム等)、そして比類ない美しさといわれ代表的な韓国土産にまでされつつも博物館で軽視される傾向がある高麗青磁をあえて多く陳列するという稀な展示(フリーアー博物館)を事例に、それぞれの背景に潜む比較研究をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会で学術発表をする機会が、期待以上に多くえられている。これらの発表に対して寄せられたコメントや、執筆のオファーにより、本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる。 しかし、反面で調査協力者と面会時間をすりあわせることが予想以上に難航し、予定していたほどの頻度で海外調査をおこなえていない。この点からは、本研究がやや遅れていると判断できる。 以上の2点から判断して、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度である。これまでの調査研究でえられた知見を、研究成果として公刊していく計画である。 今後は、(1)英文論文を執筆する、(2)執筆の過程で明らかになった不可欠な補足調査をおこなう、(3)作成した論文をもとに海外研究協力者から助言を受ける、(4)英文論文を完成させ投稿する、という作業にあたる。
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Causes of Carryover |
昨年度に計画していた国際共同研究が、海外研究協力者の都合(産休1名、学会長兼務のため多忙1名)により、今年度も面会しての共同研究を遂行することが出来なかった。これにより、旅費の執行が滞った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画していた活動を次年度に延期し、最終的に予定どおり執行する。
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