2014 Fiscal Year Research-status Report
ニホンアカガエルの卵塊調査を基にした生息環境と水田整備の影響の多角的な評価手法
Project/Area Number |
25871098
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡部 恵司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所資源循環工学研究領域, 主任研究員 (50527017)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニホンアカガエル / 卵塊 / 農村生態系 / 圃場整備事業 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニホンアカガエルの卵塊の調査から、カエル類の生息環境と農業農村整備の影響を多角的に評価する手法の構築に向けて、4研究項目(項目1:卵の安定同位体比の予備分析、項目2:卵塊の空間分布の予備解析、項目3:水田域での卵塊調査と指標間の関係解析、項目4:研究全体のとりまとめ)に取り組んでいる。このうち、今年度は項目1と3を実施した。 項目1では、(1)前年度に引き続き、産卵直前の母親ガエルを捕獲し、飼育条件下で産卵させ、親ガエルの体と卵をサンプルとした。親ガエルの後肢の筋肉、骨、指、胃と卵について窒素・炭素安定同位体比を分析し、部位間に正の相関があることを確認した。 項目3では、(1)茨城県・栃木県において、前年度から継続中の10地区および新たに選定した11地区で卵塊の調査を実施した。各地区では、水田の畦畔を歩きながら、卵塊の位置と数を地図に記録し、卵をサンプリングした。(2)産卵期間について、圃場整備が行われていない地区は、整備済みの地区(産卵可能な水辺が存在しにくい)よりも産卵開始・終了が早かった。また、整備済みの地区では、ため池などの恒久的水域では水田よりも産卵開始が早かった。(3)地区間の遺伝的多様度の比較に向けて、核DNAのマイクロサテライトを対象とした解析に既存のプライマーが使えるかどうかを確認した。卵からDNAを抽出した後、19種類のプライマーを用いて、それぞれPCR法によりDNAを増幅した。13種類のプライマーについてはマイクロサテライトに多型が確認され、遺伝的多様度の比較に利用できることが確認された。(4)卵の炭素・窒素の安定同位体比を計測し、地区間で比較した。同位体比の値から親ガエルを「水田に生息していた個体」、「樹林に生息していた個体」、「耕作放棄地に生息していた個体」に区分した結果、各区分の構成比は地区の立地環境によって異なることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、今年度までに研究項目1(卵の安定同位体比の予備分析)と2(卵塊の空間分布の予備解析)を実施するとともに、項目3(水田域での卵塊調査と指標間の関係解析)を進行中である。また、論文等の成果を着実にあげている。以上から、研究は全体を通して概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度(最終年度)は、研究計画に従い、前述の項目3(水田域での卵塊調査と指標間の関係解析)について、各調査地において卵の遺伝的多様度、安定同位体比、卵塊の空間分布、産卵期間等の指標の値を求め、農業農村整備と各指標との関係、指標間の関係を解析する。 3年間の結果をもとに、項目4(研究全体のとりまとめ)を行う。 研究協力者に現地調査や解析の協力、助言を得ながら効率的に研究を進め、関連学会で発表を行う。
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Causes of Carryover |
課題担当者のみで調査、解析作業を行ったため解析補助者の人件費を要さなかったこと、論文が依頼原稿として掲載されたため投稿料等を要さなかったことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は引き続き、項目3(水田域での卵塊調査と指標間の関係解析)に関連する調査、解析を行うため、必要な旅費や分析試薬等の消耗品費を支出する。また、研究全体のとりまとめに向けてデータ整理・解析を行うため、解析補助者の人件費、解析用ソフトウェアの保守契約料、成果の発表等に要する費用を支出する。次年度使用額については、サンプル数を増やして解析するため、消耗品費、人件費に充てる予定である。
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