2014 Fiscal Year Research-status Report
GnRHパルスジェネレーターに対するニューロキニンの生理作用の解析
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25871109
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
若林 嘉浩 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物生産生理機能研究ユニット, 研究員 (00510695)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キスペプチン / ニューロキニン / 弓状核 |
Outline of Annual Research Achievements |
弓状核キスペプチンニューロン神経系は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌を制御する最上位中枢と考えられており、このニューロン群の周期的な同期発火活動が、パルス状GnRH/LH分泌を誘起するための根源となる神経活動であることが示唆されている。しかし、この同期発火がどのようにして制御されているのかは不明である。近年、弓状核キスペプチンニューロンに共発現しているニューロキニンB(Neurokinin B; 以下NKB)が、弓状核キスペプチンニューロン群の同期発火活動の制御にとって重要な役割を持つことが示唆されている。 本研究では、弓状核キスペプチンニューロン群の同期発火活動は同神経細胞内で共発現しているNKBを介して引き起こされるという仮説を立て、これを証明するために、シバヤギを用いて1)弓状核キスペプチンニューロン群分布領域へのNKB局所投与あるいは局所電気刺激をした部位に於ける神経活動をリアルタイムに記録解析する手法を構築する。そして、2)この局所投与/刺激/記録解析システムを用いて、NKBの局所投与およびNKB受容体阻害剤の局所投与を行った際の神経活動変化および血中LH濃度の動態を同時に解析する。これらの研究を行うことにより、NKBによるパルス状GnRH/LH分泌制御機構の解明を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載された方法に即して、昨年度は多ニューロン発火活動記録電極を改良し、ヤギ弓状核キスペプチンニューロン群分布領域に薬剤を微量投与した際の神経活動を記録解する実験手法を確立した。本年度は、この手法を用いて、更に複数のシバヤギ個体を用いて実験を行った。更に、左右両側の弓状核の片側に局所投与/MUA記録電極を留置し、反対側の弓状核にMUA記録電極を留置した。左右両側の弓状核よりMUAを同時に記録解析可能な個体を用いて、NKBを局所投与した際のMUAの変化を解析した。この結果、NKBを局所投与した際の神経発火活動の上昇は、局所投与近傍の神経活動だけでなく、反対側でも同期して誘起された。このことから、弓状核キスペプチンニューロンは、反対側のキスペプチンニューロンとの間で神経ネットワークを形成していると考えられ、これまで形態学的には示唆されていたこのネットワークを、実験的に証明することが出来た。 上記のように、本年度は、順調に弓状核キスペプチンニューロンの同期発火機構解明にとって重要な知見を得ることが出来た。左右間のネットワークの存在を明らかにした本年度の結果は、次年度に行う予定である弓状核キスペプチンニューロン近傍の局所電気刺激による解析を行うことで、より多くの知見を得ることが可能と考えられる。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると自己判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、1)弓状核キスペプチンニューロンは、神経線維による神経ネットワークを形成していること、2)その神経活動の同期には自身が発現しているNKBが必要であること、3)左右両側に存在する弓状核キスペプチンニューロン群間においても神経ネットワークが存在しており、各々の神経活動は同期していること、が明らかとなっている。この結果を用いて、今後は、片側の弓状核キスペプチンニューロン分布領域を局所的に電気刺激することによって、同側および反対側における神経活動変化を解析する。また、電気刺激を行う前に、NKB受容体の阻害剤を局所投与することで、NKBが発火に関与しているか否かを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、局所投与/MUA記録個体の例数を多数得るため、電極作製用の白金線および局所投与部位の確認のための試薬(染色液および免疫組織化学染色、in situ hybridization用の試薬など)を主に購入した。当初の予定であった局所電気刺激についてはまだ実験を行っていないため、この実験に関わる刺激電極などの購入を行わなかった。このため当初の計画以下の研究費しか使用しておらず、次年度への繰り越しの要因となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、更なる実験例数が必要となるため、多くのヤギへの局所投与・記録電極留置手術が必要となる。このため、記録電極作成関連の機材、投与部位確認用の一般試薬類が必要となる。また、NKB受容体阻害剤の購入を予定している。また、弓状核キスペプチンニューロン分布領域の局所電気刺激の為に必要となる微小刺激電極等の実験器具の購入を予定している。
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