2013 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレス特異的な小胞体膜動態を介した細胞分化制御
Project/Area Number |
25871124
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中西 慶子 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 協力研究員 (30415252)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞分化 / 小胞体ストレス / 筋発生 / 小胞体膜動態 |
Research Abstract |
筋前駆細胞である筋芽細胞が筋蛋白質を発現する筋管細胞に分化する過程で、一過的に小胞体ストレス応答が生じ、これが筋分化過程において重要な役割を果たしていることを私たちは以前報告した。しかしながら、この分化過程に組込まれた生理的小胞体ストレスの発生源は明らかではない。 本研究課題において、この小胞体ストレスの原因が小胞体内カルシウムの涸渇であることが強く示唆された。筋管細胞は多数の筋芽細胞が融合する事により形成される。細胞融合に先立ち、筋芽細胞内に小胞体由来の特殊な膜構造が出現することを私たちは見出した。そしてこれと類似した構造が、薬剤処理により小胞体内のカルシウムを涸渇させた際に特異的に形成された(この際小胞体ストレスも誘導される)。これらの構造を透過電子顕微鏡を用いて解析した結果、この膜構造体はシート状の粗面小胞体由来であり、両者に共通する以下のような特徴が見出された。 1. 小胞体膜が同心円状に層状に積み重なる。 2. 小胞体内腔幅が狭くなる又は消失する。 3. リボソームが脱離する。 これらの特徴は、小胞体内カルシウム涸渇以外の原因による小胞体ストレスを誘導した際には見られなかった。小胞体ストレスは小胞体内にアンフォールドしたタンパク質が蓄積した状態と定義され、タンパク質のジスルフィド結合阻害剤であるジチオスレイトール処理などを用いて小胞体ストレスを誘導した際には小胞体内腔の増大が報告されていた。今回、ツニカマイシン(タンパク質の糖鎖修飾阻害剤)及びブレフェルディンA(小胞体-ゴルジ体間タンパク質輸送阻害剤)を用いて小胞体ストレスを誘導した結果、小胞体内腔の増大が確認され、小胞体内カルシウム涸渇による小胞体ストレス時にのみ特異的な小胞体膜構造変化が生じることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として掲げた「筋分化過程で生じる小胞体ストレスの原因の同定」について、これが小胞体内カルシウム涸渇であることを示唆する結果が本年度の解析により得られた。また、研究計画I-1「小胞体形態券かの詳細な解析」について達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
筋分化過程において小胞体内カルシウムが低下することを直接的に示す実験計画を遂行する。具体的には小胞体内カルシウム濃度変化をイメージングによる可視化に取り組む。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年7月よりH26年1月までの7ヶ月間、in vivoイメージング技術習得を目的として、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターに出向していたため。 繰越した前年度未使用額は、25年度分の消耗品費として請求していたDNAチップ、遺伝子導入試薬、抗体類にかかる費用分であり、これは26年度の研究計画において実施する。
|