2014 Fiscal Year Research-status Report
少数人工原子による人工原子格子のスピン相関と環境との相互作用
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25871126
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
天羽 真一 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (90587924)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子ドット / 量子デバイス / スピン相関 / 電気伝導特性 / 半導体 / 核スピン / 量子情報 / 量子シュミレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、多くの量子ドットや量子井戸が結合した系において、その結合・結合の仕方によってできる電子状態・スピン状態の解明と共に、その結合によって生じる電子スピンと核スピンの相互作用や電子の干渉性のフォノンの影響などの環境との相互作用の解明を目指している。 今年度は、特に、次の2点で進展が見られた。 (1) 量子井戸を2つ重ねて形成される2層量子ホール状態は、層間の自由度を反映して、傾角反強磁性状態転移やマクロなコヒーレンス状態など多彩な物性を示すことが明らかにされてきた。本研究では、これまでの量子井戸作製技術の発展として、また、より自由度の大きい系に着目して、3つの量子井戸が結合した3重量子井戸構造を作製、電気伝導特性を調べた。表面・裏面のゲート電圧に応じて、量子井戸のポテンシャル変調を加えることができ、それに応じた磁気振動の変化も観測、また、測定結果から、電子状態の遷移について検討を行っている。これらの結果を、国際学会、国内学会にて報告すると共に、これまでの測定結果の解析、異なる構造を持つデバイスの測定・解析を進めている。 (2)電子数が1と4の2重量子ドットにおいて観測されたスピンブロッケイドについて研究を進めた。電子が4つ入っている量子ドットでは、軌道縮退によるフント則の効果で、スピンが揃ったtriplet状態が安定となることが知られている。同じスピンをもつ電子が電子数1の量子ドットに入り、高スピン状態(quadruplet状態)となった場合、スピンブロッケイドが実現することが期待できる。本研究では、電子スピン・核スピン結合によってスピンブロッケイドが解除され、電流にヒステリシスが見られる現象に着目した。測定で得られたヒステリシスと電子状態との対応付けを議論し、本研究結果をまとめ、論文投稿を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
寒剤の供給に支障が生じたなどの原因から、多重結合量子ドット測定については、まだ、進められていない点が多い。年度後半より復帰したため、遅れを取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
縦横結合4重量子ドットについては、極低温の測定ができていないため、スピン状態の議論ができるよう、早急に測定が行えるように進めていきたい。また、より多くの量子ドットが結合する系についても、研究を進めると同時に、結合量子井戸系についても、電子状態の議論から、核スピンとの結合へ発展させていく。これらの結果、また、核スピン・フォノン系について、これまでの結果を論文にまとめられるよう、尽力して参りたい。
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Causes of Carryover |
寒剤の供給の停止などで、研究遂行に遅れが生じ、測定機器の購入を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度末に寒剤の供給が安定的となったため、昨年度の計画を含めて、今年度、研究を遂行する。予定していた発振器の購入や、半導体基板、寒剤の購入に充てたいと考えている。
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Research Products
(6 results)