2013 Fiscal Year Research-status Report
皮膚炎を標的とした免疫応答ダイナミクスのマルチスケールモデリング
Project/Area Number |
25871132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中岡 慎冶 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (30512040)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マルチスケール数理モデル / 確率シミュレーション / 免疫系 / アトピー性皮膚炎 |
Research Abstract |
1. 皮膚炎発症と進行のダイナミクスを記述したマルチスケール数理モデルの構築を大目標として掲げ、三年間にわたってミクロ・メゾ・マクロスケール各階層における動態を記述した数理モデルの作成に取り組んでいる。今年度は、メゾスケールを記述した数理モデル構築と確率シミュレーション研究に専念して研究を進めた。具体的には、表皮の大多数を占める細胞であるケラチノサイトを標的として、オートクライン型のサイトカイン分泌による細胞間相互作用を記述した数理モデルを構築した。細胞内でのサイトカイン mRNA 転写と翻訳によるサイトカインの生成・分泌を常微分方程式により記述し、分泌されたサイトカインが細胞間を拡散して別の細胞に取り込まれる状況を計算機で実装可能なルールによって記述した。単位時間あたりに生じる抗原刺激の回数を Poisson 計数過程によって記述し、上記のサイトカイン生成・分泌過程と併せて確率シミュレーションを実施した。本研究により、メゾスコピックなスケールで想定される炎症反応の基本機構の1つの可能性を提示した。次年度で取り組む予定であるミクロ、マクロスケールの数理モデルを統合するための数理モデルを開発したという点で、一定の成果が認められる。本研究は成果として論文投稿の準備中である。 2. マルチスケール性を表現した数理モデル構築には、いくつか注意すべき点が存在する。マルチスケール性を考慮する際に生じる特有の問題に留意しながら数理モデルを構築する上での注意点、加えて後半では、イメージングを始め近年取られるようになった定量計測データを活用した皮膚組織に対する数理・実験融合研究に関する研究のレビューをまとめて総説として論文発表した(印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、初年度に予定していた細胞内のシグナル伝達系を記述したミクロモデル(プロテアーゼと酸化ストレス)は、参考とする実験データに基いて作成する必要がある。当初の予定とズレが生じたため、初年度は上記の通りメゾスコピックスケールの数理モデル構築に専念した。進行プランに変更はあるものの、進捗状況は予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、初年度に予定していたミクロモデルの構築に取り組み始めている。まずはプロテアーゼに起因すると考えられる表皮のバリアー機能減弱を表現するためのシグナル伝達系の数理モデル構築に取り組む。並行して、酸化ストレスがトリガーとなって生じる免疫応答とその破綻に関与が想定されるシグナル伝達系についても、同様に数理モデルの構築に取り組む予定である。
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