2013 Fiscal Year Research-status Report
トポロジカル絶縁体と強磁性体接合界面による新奇量子相開拓
Project/Area Number |
25871133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 圭 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (90469932)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 量子ホール効果 |
Research Abstract |
強磁性トポロジカル絶縁体を合成し量子異常ホール効果の発現とその特性を詳細に調べた。 量子異常ホール効果が発現するためには、1.まずフェルミエネルギーが表面状態のディラック状態の質量ゼロの中性点にきていること、2.系が強磁性転移してスピン偏極していること、が必要である。これまでの研究でBi2Te3薄膜はフェルミエネルギーが中性点より高い電子ドープ型、Sb2Te3はフェルミエネルギーの低いホールドープ型ということが分かっている。(Bi1-ySby)2Te3薄膜を製膜しホール効果からy=0.22でフェルミエネルギーがほぼ中性点くることを見出した。次に、強磁性化するために遷移金属のCrをドープしたCrx(Bi1-ySby)2-xTe3薄膜を合成した。Crドープx=0.22の薄膜は約50Kで強磁性転移することが分かった。2Kにおいて異常ホール効果が最大になるように膜厚を最適化した。2Kでの異常ホール効果の最大値は3.5kohmもの巨大な値を得た。ゲート絶縁膜としてAl2O3ををトップゲート構造のデバイスを作製しゲート電圧によって正確にディラック状態の中性点にフェルミエネルギーを調整できるようにした。量子化状態を観察するために極低温(50 mK)でゲート電圧を変化させて異常ホール効果を測定した。中性点のゲート電圧において異常ホール効果の値が0.98h/e^2になりほぼ量子化することが分かった。そのときRxxはほぼゼロになり量子異常ホール状態が実現していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、トポロジカル絶縁体のディラック表面状態と強磁性体界面との関係を調べることである。最近、他の研究グループがトポロジカル絶縁体の(Bi1-ySby)2Te3にCrドープすることによって強磁性トポロジカル絶縁体を合成し異常ホール効果が量子化する量子異常ホール効果を報告して注目されている。本研究では、まず界面に特化した研究の前にスピン偏極したディラック電子の輸送特性を解明することが重要であると考えた。期待通りCrドープした(Bi1-ySby)2Te3の強磁性化し、極低温で量子異常ホール効果の観察に成功した。これは最初に報告した研究グループの他に再現した例がなく、本研究で初めて再現した。量子異常ホール効果の実現にはフェルミエネルギーをディラック電子の中性点にドーピングによってもっていくことが重要であり、これまでの他のグループの薄膜の品質は意図しない結晶欠陥や組成ずれによるドーピングがありフェルミエネルギーが中性点から離れいるため、観察している電気伝導は表面状態ではなくバルクバンドのにドープされた電子伝導を見ていることがほとんどだった。 25年度に合成・観察に成功した量子異常ホール効果のゲート電圧、温度を詳細に変化させてRxxとRxyの振る舞いを調べたところ、通常の量子ホール効果のスケーリング則にしたがうことが分かった。これは、さらに表面状態と強磁性との界面の電子伝導の研究を進める上で非常に役に立つ知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の量子異常ホール効果の知見を基盤に、強磁性体とトポロジカル絶縁体(TI)界面でのディラック電子の研究を進める。 現在、薄膜合成に使っている基板はInP(111)基板である。強磁性のターゲットである強磁性酸化物の上に(Bi,Sb)2Te3薄膜を製膜するために酸化物基板上に(Bi,Sb)2Te3薄膜を高品質で合成する必要がある。典型的な強磁性絶縁体のガーネット基板に(Bi,Sb)2Te3薄膜を製膜し合成条件を最適化する。強磁性基板と薄膜下部表面状態界面でスピン偏極すればCrドープ(Bi,Sb)2Te3のように大きな異常ホール効果が観察できるはずである。基板と薄膜の界面に結晶欠陥をつくらないような成長条件を探索する。25年度の研究でCrを30%以上ドープした(Bi,Sb)2Te3はTIではないが強磁性体であることが分かってきた。そこで、高濃度Crドープ(Bi,Sb)2Te3の超薄膜と(Bi,Sb)2Te3の2層膜で本研究の目的の界面が実現できると期待する。結晶構造が同じなので結晶欠陥のない理想的な界面である。 TIと強磁性体との界面の他に、TIとバンド絶縁体界面についても研究を進める。これまでの研究で基板に使っているInP(111)との界面はディラック表面状態を保っていることを解明した。他の研究ではTI体と真空状態との界面の表面状態はよく調べられていても、実は固体との界面でディラック表面状態が存在していることを調べた研究は少ない。固体との界面でもディラック表面状態が保たれるのであれば、例えばTI/バンド絶縁体薄膜/TI/InPのような2層膜の面内伝導はどうなるのであろうか。バンド絶縁体薄膜が十分厚いときは2種類のディラック表面状態の並列回路、薄くしていくと一つのディラック表面状態が期待できるだろう。このように、薄膜技術を向上させていくことでTIの界面の研究をさらに広げていく。
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