2014 Fiscal Year Research-status Report
DNA解析による有毒野草バイケイソウと食用山菜の迅速識別法の開発
Project/Area Number |
25871151
|
Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
吉川 ひとみ 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (20392269)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | リアルタイムPCR / trnH-psbA / trnL-trnF / バイケイソウ / TaqMan |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界には食用山菜と類似した有毒植物が多く存在している。その中でも、バイケイソウは、誤食による中毒の発生件数が日本で最も多いものである。本研究は、種特異的なDNA領域を利用することにより、バイケイソウの迅速正確な特定を目指す。 バイケイソウ、近縁植物、およびバイケイソウと形態が類似している山菜のオオバギボウシやギョウジャニンニク、誤食されることのある他の有毒植物を試料として用いた。試料からDNAを抽出し、葉緑体上の各種バーコーディング領域(rbcL、trnH-psbA、trnL、trnL-F)の配列を解析した。その結果、rbcLは、種特異的な配列が2塩基と少なく、さらにtrnLでは種内変異が見られた。しかし、trnH-psbA、trnL-trnFについては種内変異は見られず、種の判定に適切と考えられた。 次に、得られた種特異的な配列を利用して、TaqManプローブ法に基づく検出を試みた。trnH-psbA(増幅長約100 bp)、trnL-trnF(増幅長約200 bp)両領域にプライマーを設計した。このプライマーを用いてリアルタイムPCRによる検出を行った結果、trnH-psbAについては1pgのDNAから、trnL-trnFについては10pgのDNAから検出可能であった。32試料を用いて特異性の確認を行ったところ、双方のプライマーともバイケイソウ特異的な検出ができた。食中毒を想定して、バイケイソウと食用山菜オオバギボウシの混合物について検出を行ったところ、バイケイソウDNAの25倍量のオオバギボウシDNAが混合されたものについても正しく判定可能であった。2領域についてマルチプレックスPCRを試みたところ、2領域を同時に検出することができた。 リアルタイムPCRは抽出から2時間程度で判別可能であり、開発した手法により、迅速、特異的に食中毒の原因を判定できる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、有毒野草バイケイソウの迅速同定系を構築することを目標とした研究である。バイケイソウ、近縁植物、およびバイケイソウと形態が類似している山菜、他の誤食される有害植物を試料として用いた。種特異的な領域の配列解析(DNAバーコーディング)により、種特異的な配列を同定するとともに、食中毒の原因解明法のためにreal-time PCRを利用して迅速同定系の構築を試みた。 最初にバイケイソウおよびその近縁種について, バーコーディング領域のDNA解析を行い、種判別に有用な領域(trnH-psbA、trnL-trnF)の選定を行った。次に、得られた種特異的な配列を利用して、TaqManプローブ法に基づく検出法の構築を試みた。プライマーを、trnH-psbA(増幅長約100 bp)、trnL-trnF(増幅長約200 bp)に設計し、real-time PCRによる検出を試みたところ、trnH-psbAについては1pgのDNAから、trnL-trnFについては10pgのDNAから検出が可能であった。32試料を用いて特異性の確認を行ったところ、双方のプライマーともバイケイソウ特異的な検出が可能であった。さらに、食中毒を想定して、バイケイソウと食用山菜オオバギボウシについて混合したものについて検出を行ったところ、バイケイソウの25倍量のオオバギボウシDNAが混合されたものについても2プライマーで正しく判定可能であった。さらに、2領域についてマルチプレックスPCRを試みたところ、2領域を同時に検出することが可能であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
食中毒事案を想定した模擬試料を作成し、前年度に引き続き、real time PCRの模擬試料についての作製、解析を進める。 それと並行して、lamp法など新たな手法を用いた同定法についても検討を行う。 また、これまで得られた成果について学会発表、論文発表を行う。
|
Causes of Carryover |
研究申請時には想定できなかったが、平成25年10月より26年9月まで警察庁犯罪鑑識官付の兼務業務をすることとなり、立場上海外をはじめとする遠隔地での学会発表を行うことが不可能であった。さたに平成26年度に食中毒事案を想定した模擬試料を作製する予定であったが、数時間以上要するため作業に支障をきたした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の状況にかかわらず、ほぼ計画予定通りにバイケイソウについてreal-time PCRを用いた迅速同定系の構築に成功した。しかし、模擬試料について作製途中であるため、当該試料について迅速同定が可能か否か検証を引き続き行う。 また、当初予定していた海外での学会発表が不可能であったため、得られた成果について平成27年度中に行われる学会で発表する予定である。
|
Research Products
(4 results)