2014 Fiscal Year Research-status Report
在日外国人の母親の子どもに対する健康観に関する研究
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25871167
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
須藤 恭子 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (80458976)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 在日外国人 / 母親 / 健康観 / 健康行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
【緒言】母親のとる子どもに対する健康行動は、子どもの健康を大きく左右する。外国人である母親は、日本とは異なる母国での生活習慣や宗教をもつことから、ヘルスケアへ適切にアクセスし子どもの健康を守ることが難しい状況にあると考える。 【目的】日本に在住する母親の子どもに対する健康行動とそれらに関連する要因を明らかにし、効果的な支援の示唆を得る。 【方法】平成26年2月~6月に、外国人を対象とした子育て支援グループに所属する就学前の子どもをもつ外国人の母親を対象に、フォーカスグループインタビュー(FGI)を実施した。その後、平成27年2月~4月にFGIの結果により独自に作成した質問紙を用いて、無記名自記式質問紙調査を実施した。質問紙調査の対象者は、外国籍の子どものが多く在住する上位30の市区町村にある日本語教室に所属する就学前の子どもをもつ外国人の母親とした。 【結果】250部(有効回答51.9%)を分析した。因子分析により、日本に在住する外国人の母親がとる子どもに対する健康行動は、「日常生活上の予防行動」「身近な人への相談」「予防接種と健診の受診」「積極的な情報の獲得」「家庭での病気への対応」の5つの要素で構成されていた。母親のCVS(Child Vulnerability Scale)のカットオフポイントの10ポイントを超える母親は64人(25.6%)だった。保育園等の利用群と、日本と母国のヘルスシステムの類似群は「積極的な情報の獲得」、予防接種や健診の理解低値群は「予防接種や健診の受診」の健康行動が有意に低い結果であった。 【考察】日本に在住し幼い子どもをもつ外国人の母親は、先行研究結果に比べCVS高値群の割合が高く、母親が子どもの健康を適切にとらえていない可能性が明らかとなった。母親の日本での生活状況と母国と日本との類似性や母親の有する知識と健康行動との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成25年度から2年間の計画で実施したが、初年度、インタビュー調査開始までに時間がかかり、インタビュー調査を2年目にも実施することとなった。そのため、本来、今年度調査予定であった質問紙調査の開始が遅れ、研究全体の進行はやや遅れ気味となっている。しかし、質問紙作成、実施は滞りなく進めることができ、質問紙回収率も50%程度と良好であり、今年度内に質問紙調査結果の分析までをほぼ終了することができたことから、おおむね計画通りに進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の目的はほぼ達成することができていると考える。日本に在住し幼い子どもをもつ母親の健康行動に関連する要因として母親の子どもに対する健康観について、新たな知見を見出すことができた。本研究では、健康観を健康行動に影響する要因として捉えたが、今後は、明らかとなったこれら要因間の関係を丁寧に分析し、研究を発展させる予定である。ハード面だけでなくソフト面への働きかけを行うことが、日本に暮らす外国人の子どもたちの適切なヘルスケアへのアクセスのための効果的な支援方策を導く鍵となると考えている。健康行動に関連する要因間の分析といった本研究の発展は、アトラクティブな介入につながることが期待できる。 また、今後も本研究から得られた示唆を広く公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、平成25年度から2年間の計画で実施した。しかし、初年度、研究開始が6月程度遅れたため、全体的な研究の進行も逐次遅れる結果となり、次年度使用額が生じた。平成27年度までの一年間研究補助期間延長を申請し承認されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、主に質問紙調査への謝礼および研究の公表に使用する予定である。
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