ユーラシアに広域分布する小型蛾類の分類学的再検討とその遺伝的多様性

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25871181
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: National Museum of Nature and Science, Tokyo
• Principal Investigator: 神保 宇嗣 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (10568281)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: DNAバーコード / 鱗翅目 / 旧北区 / 分類学 / 遺伝的多様性

Research Abstract

本研究は、小蛾類の1群であるハマキガ類のユーラシア広域分布域種を対象とし、DNAバーコード領域の塩基配列情報を活用して、分子・形態の両面に基づく分類学的な再検討をおこない、広域分布種の種分化の傾向の把握と理解することで、これらに基づく同定システム構築へ寄与することを目的としたものである。
これらの目的のため、2013年度は、本州中部（岐阜県、6月）および北海道（根室および釧路周辺、7月）で野外調査を行い、多くのサンプルを収集した。一部の個体については、DNA塩基配列を決定し、形態的な検討も行った。また、2014年1月には、タイプ標本を含む対象種の標本について、イギリス自然史博物館にて調査を行った。さらに、ユーラシア産広域分布種の分化の程度をDNA塩基配列をもとに予備的な解析を行った。DNAバーコードの公式ライブラリーであるBOLDでは、塩基配列に基づいてサンプルをクラスター化し、ID（Barcode Index Number: BIN）をふってデータベース化している。このBINを分化の指標として用いた。この結果は、一部形態学的研究へフィードバックさせた。
以上の結果、ヨーロッパの個体群については大部分の種が単一のBINにまとまったが、Lozotaenia forsteranaコスギハマキについてはヨーロッパ内でも変異が大きく、日本産の個体群もユーラシア産と2%程度の変異があった。それ以外の種でも、ヨーロッパ産とは1-3%程度違っているものも多く、ヨーロッパ産の同種と判定できなかったり、同一のBINに入らなかいものもあった。すなわち、DNAバーコードに基づく同定には、日本を含むアジア地域の情報を充実させることが必要なことを示している。また、ヨーロッパ産の種から独立させる必要がある種、逆にヨーロッパ産とまとめるべき種について、分子からもこれらを支持するデータが得られた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

標本調査についてはおおむね予定通りに進んでいる。予備調査はやや遅れているが、それでも追加で集中的に調べるべき分類群の存在も判明した。野外調査については、昨年は２回行ったものの、天候があまり良くなかったため成果は限定的であった。また、天候不順等のため、春期の野外調査を行うことができなかった。予定では少なくとも一群について分類学的な研究としてまとめる予定であったが、上記のように必要なサンプルが入手できないなどの状況もあったため、全体としてはやや遅れていると考える。

Strategy for Future Research Activity

昨年度に引き続き、野外調査および標本に基づく形態比較とDNA情報を統合させた分類学的研究、同定支援システム構築に寄与するための情報の収集を行っていく。野外調査については、昨年不十分にしか行えなかった本州中部での調査を充実させるとともに、西日本でのサンプルの追加も行う。その際には、現地調査のほか、サンプル収集の依頼等も行っていきたい。研究においては、計画時に予定していたPandemis、Pseudeulia属の2つの研究をまず進めるとともに、昨年度に新たに判明したものも含め、残る分類学的な問題点についても、解析に順次着手する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

予備的な解析がやや進んでいないこと、論文の出版に至っていないことから、それらに関わる経費がまだ執行されていないため。
物品費（実験試薬、昆虫採集・保存用具、消耗品類）および人件費等（資料整理補助、実験補助、英文校閲等）として執行する。