2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25871185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 信靖 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (70415644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジヒドロキシペリレンキノン / 菌核粒子 / 最小発育阻止濃度(MIC) / pKa |
Research Abstract |
平成25年度は、本申請課題の評価対象物質である4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone(DHPQ)を合成するとともに、合成したDHPQを用いて抗菌能評価および酸解離定数(pKa)の評価を行った。 具体的には、既報(A. Calderbank et al., J. Chem. Soc., 1954: 1285-1289)に従ってDHPQを合成した。1ロット毎に得られる収量が少ないため、合成を複数回行うことにより約3gの粗DHPQを得た。既報では最終段階で昇華精製を行っていたが、この操作により著しくDHPQの収量が減ってしまうこと、および元素分析計による純度評価で80%以上の純度が確認できたため、本申請課題では昇華精製を行わなかった。得られたDHPQを用いて、先ずは抗菌能の評価を最小発育阻止濃度(MIC)により行った。菌種には大腸菌(Escherichia coli)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用い、DHPQと類似構造を持つテトラサイクリン(抗菌剤)、キニザリン、1,4-ジヒドロキシナフトキノンについても行った。その結果、他の類似化合物では抗菌能が認められたものの、DHPQについては有意な抗菌能が認められなかった。 また、MICに用いた類似化合物とともにDHPQの水酸基についてpKaを評価した結果、DHPQのpKaが最も高い(10.4)ことが明らかになった。このことから、通常の環境下でのpHにおいてはDHPQの水酸基はほとんど解離していないことが明らかになった。DHPQとアルミニウムイオンとの錯形成能の評価については、平成25年度の終わりより検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の評価対象物質である4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone(DHPQ)を、以降の各種評価で用いるのに十分な量(約3g)を合成することができた。また、DHPQのpKaの評価についても行った。申請時の平成25年度計画にあった電子顕微鏡等による菌核粒子の詳細な状態観察は遂行できなかったものの、当初は平成26年度以降の計画としていたDHPQの抗菌能評価を遂行した。このため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、引き続き合成したDHPQを用いてアルミニウムイオンとの錯形成能の評価を行うとともに、DHPQの電気伝導能の評価を行うことを計画している。また、菌核粒子のサンプリングを行い、電子顕微鏡等による詳細な状態観察を行うことを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請課題において次年度使用額が生じた主な理由は、当初計画していた電子顕微鏡を用いた菌核粒子中における4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone(DHPQ)の詳細な状態観察を行わなかったためである。その理由としては、各種の評価を行うための十分な純度であるDHPQを予め十分量合成することにより、以降の研究遂行が円滑に運ぶと判断したためである。しかしながら、十分量のDHPQを得るための合成に当初計画していた以上の時間を要したため、詳細な状態観察を行うための菌核粒子の採集をすることができず、結果的に電子顕微鏡等による状態観察に至らなかった。このため、電子顕微鏡等の施設使用料として計上していた額と同程度の額が次年度使用額として生じた。 本申請課題の遂行にあたっては、電子顕微鏡等による菌核粒子の詳細な状態観察は必須である。このため、使用用途は当初の計画の通り、電子顕微鏡等による詳細な状態観察に使用する。次年度以降に菌核粒子のサンプリングを行なった後、得られた菌核粒子の状態観察を行う際に使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)