2014 Fiscal Year Research-status Report
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25871185
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 信靖 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (70415644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒドロキシキノン / ペリレン / 錯形成 / 電子伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone (DHPQ)の物理化学的な性質を中心に検証した。具体的には、水溶液および有機溶媒中におけるDHPQとAlイオンとの錯形成能の検討、FT-IRを用いた菌核粒子中のDHPQの状態推定、およびサイクリックボルタメトリーによるDHPQの電子伝達能の評価を行った。 水溶液中では、DHPQの3倍量程度のAlイオンを添加しても、錯形成は確認できなかった。このため、有機溶媒(1,4-ジオキサン)中のDHPQに、500倍量程度までAlイオンを共存させて錯形成を確認した。その結果、2倍量程度でも若干のスペクトル変化は認められたものの、100倍量のAlイオンが存在する時とはスペクトルが明らかに異なっていた。同様の化学構造を持つ5,8-dihydroxy-1,4-naphthoquinone (DHNQ), 1,4-dihydroxyanthraquinone (DHAQ), テトラサイクリンについても検討してみたものの、水溶液中および有機溶媒中での結果はほぼ同様であった。これらのことから、DHPQおよび類似化合物はAlイオンと積極的に錯形成をしないものと結論した。 また、粉砕した菌核粒子をFT-IRにより測定し、DHPQ、およびAlと錯形成したDHPQ(DHPQ-Al)のスペクトルとを比較した。その結果、DHPQ-Alに特徴的なピーク(1510 cm-1)は観察されなかった。このことから、菌核粒子に含まれているDHPQは錯形成をしておらず、DHPQそのものとして存在しているものと考えられた。 DHPQの電子伝達能については、ジメチルスルホキシド中でのサイクリックボルタモグラムを測定した。その結果、DHNQやDHAQとは異なる挙動が観察されたものの、これについては改めて検証する必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題のうち、DHPQの物理化学的な性質(錯形成能、電子伝達能)と菌核粒子中の存在状態については、これまでの検討結果からほぼ明らかになりつつある。また、昨年度に実施したDHPQの抗菌性についても既に明らかになっていることから、総合的には概ね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
DHPQの物理化学的な特性等については計画通りに明らかになっているものの、電子顕微鏡等を使った状態観察等については計画通りに進行していない。このため、平成27年度は電子顕微鏡等を使った状態観察を中心に行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、当初計画していた電子顕微鏡を用いた菌核粒子中におけるDHPQの詳細な状態観察を行わなかったためである。その理由としては、平成26年度はDHPQの物理化学的な性質を明らかにすることに重点を置いたためである。その結果、DHPQの物理化学的な性質についてはほぼ明らかにすることができた。また、効率的に研究を遂行するよう努めたことにより、当初の計画よりも予算の使用額を抑えることができた。一方で、電子顕微鏡等による状態観察に至らなかったため、電子顕微鏡等に施設使用料として計上していた予算を執行できなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本申請課題の遂行にあたっては、電子顕微鏡等による菌核粒子の詳細な状態観察は必須である。このため、使用用途は当初の計画の通り、電子顕微鏡等による詳細な状態観察に使用する。また、予算の効率的な執行によって生じた繰り越し額については、菌核粒子から抽出された高分子化したDHPQの抗菌性の確認に使用することを計画している。
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