2014 Fiscal Year Research-status Report
東京地域における都市地下温暖化の形成過程解明と将来予測に関する研究
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25871190
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮越 昭暢 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 主任研究員 (30392666)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地下温度 / 地下水流動 / 首都圏 / 都市化 / 排熱 / 地下構造物 / 地下温暖化 / 地下環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京地域における地下温度上昇の実態を解明するため,平成26年度においては,前年度に選定した地下温度モニタリングポイント10地点(東京都内6地点,埼玉県内4地点)について観測を継続し,研究期間の中間成果として当該データを取得した。 取得した地下温度モニタリングデータには,観測した全ての地点において継続的な上昇傾向が確認され,東京地域の広範囲に地下温暖化が生じていることが確認された。本研究においては地下温暖化に対する都市化の影響を評価するため,都市中心部だけでなく郊外においても観測できるようにモニタリング地点を選定したが,地下温度の上昇傾向は都心中心部に位置する地点で大きく,郊外に位置する地点で小さい傾向が認められた。また,同一地点においては深部よりも浅部で温度上昇が大きい傾向が認められたが,都心中心部の地点においては,特定の深度で特に温度上昇が大きいケースも確認された。 さらに地下温度モニタリング結果においては,前述した地下温度の上昇傾向だけでなく,地下温度の微細な変動が観測され,上昇傾向が一様ではないことが確認された。この変動は,都市中心部に位置する地点だけでなく,郊外に位置する地点においても認められた。データ解析の結果,このような変動は,東京地域の地下温暖化が,従来から要因とされてきた地表面温度上昇の影響だけでなく,地下構造物からの排熱や地下水開発の影響を受けていることを示唆していると考えられた。 地下温度モニタリングに併せて,平成26年度においては地下温度プロファイルの測定を平成25年度から継続して実施し,当該データを得ることができた。このデータはモニタリングデータの検証に適用するだけでなく,過去データとの比較検討に活用することで,長期の地下温度環境の変化の解明に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画の実施項目は次の5項目が含まれる。①地下温度モニタリングの継続(4~3月)②3次元地下モデルの構築(4~12月),③シミュレーションの実施(1~3月),④学会発表(5,10月)。①については,計画通り継続して実施してデータを取得すると共に,取得データのデータベース化に取り組んだ。②,③については,①の中間報告の結果を踏まえて,取得したモニタリングデータをより活用できる方法を検討し,当初予定した広範囲を対象としたシミュレーションではなく,モニタリング地点を対象とした数値解析を実施することにより当該研究の目的である地下温暖化の評価と将来予測に取り組むこととした。今年度内は都市中心部と郊外の中間に位置するモニタリング地点を選定して地下モデルの構築に取り組み(②に相当),数値解析と観測データの比較検討(③に相当)を開始した。本地域においては地下水揚水等の人為影響を受けた地下水流動の影響を検討する必要があるが,数値解析においては,この影響が相対的に少ないと期待できる浅部の沖積層のデータに着目することで,都市化に伴う地下温暖化の影響評価に取り組んだ。これにより研究の目的である都市地下温度の実態(都心-郊外・深度による温度上量率や特徴・地下ヒートアイランド)の解明を進め,最終年度の取りまとめを行う予定である。④については,地球惑星科学連合(5月),Asia Oceania Geosciences Society(国際学会,7月),International Association of Hydrogeologists(国際学会,9月)において研究成果の一部を中間報告した。これらの本年度の研究内容は,年次計画に沿って実施されており,大きな問題や遅延は認められない。そのため研究目的の達成に向けて概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は取得したデータ解析を進め,研究成果を取りまとめる。実施計画は下記の通り。①地下温度モニタリング結果と数値解析結果の比較と検証(4~6月),②地下温暖化の形成過程の検討,将来予測の実施(5~11月)③まとめ,報告書の作成(12~2月)④学会発表(5,10月) ①については,地下温度モニタリングデータの取得と結果の解析に取り組み,地域や深度による温度上昇率の特徴や差異を抽出する。また,この観測結果と数値解析の結果と比較検討し,地下温暖化に与える地表面温度上昇と地下構造物の廃熱の影響を分離して定量的に評価する。平成26年度の中間報告においては,都市中心部と郊外の変動傾向の差異の他,地点によっては上昇傾向に経時変化を有する地点が認められた。比較検討においては,これらの新たな知見の評価についても取り組むことを考えている。②については,①の検討結果に加えて,本研究により取得したデータと過去データの比較検討を行い,過去10年間程度の長期的な変動傾向の把握に取り組む。これにより,長期および①で求められる短期の変動傾向の違いを求め,地下温度の変動傾向を明らかする。そして,これらを総括して,③地下温暖化の形成要因の解明と将来予測の成果として取りまとめる。なお,本研究の当初計画においては,地下温度モニタリングを平成27年度内に終了させることを想定していたが,本研究を通じて観測地点の管理者と共同研究による継続的な連携関係を構築することができ,本研究の取りまとめに必要なデータの取得後も観測を継続できる見込みとなった。④については地球惑星科学連合(5月)およびIAH(9月)において発表を予定している。
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Causes of Carryover |
国際学会の旅費について,見込額よりも安価な旅程・航空券を選択することができ,旅費を節約することができた。また,野外調査補助ため人件費・謝金の支出を予定していたが,共同研究者の補助を得られたため,支出が不要となり節約できた。これらの理由により,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度参加を予定している学会の旅費と参加費について,為替変動などの理由により,予算に不足が生じる見込みである。また,本年度は測定したデータの精度向上のために校正作業を実施する予定であり,追加の支出が見込まれる。これら不足分について,次年度使用額を充当させる予定である。
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