2013 Fiscal Year Research-status Report
重希土類資源として最適な難溶性鉱物の資源評価法の開発
Project/Area Number |
25871193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
星野 美保子 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (10549885)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重希土類資源 / アルカリ岩 / 資源評価 / 難溶性鉱物 |
Research Abstract |
アルカリ火成岩に含まれるジルコンやユージアル石などの鉱物が、資源として重要な重希土類元素を多量に含有することは古くから知られていたが、風化や変質に強く分解しにくい鉱物(難溶性鉱物)であるため、これまで資源開発の対象にはなっていなかった。しかし、研究代表者らの最近の研究により、アルカリ火成作用に伴う熱水活動の過程で形成されたHREE含有ジルコンは、結晶性が著しく低下しており、簡単な酸処理でHREEをほぼ100%抽出できることが判明した。そこで本研究課題では、ジルコン以外の鉱物にもこの手法を適用し、HREE資源として利用可能な難溶性鉱物の資源評価法を提案することを研究の目的とする。そこで、平成25年度は、(1)産地や形成条件の異なるジルコン、フェルグソン石、エルピダイト、ユージアル石、モサンドライトに含まれるHREEの含有量の決定と(2)モンゴルKhan Bogdアルカリ岩鉱床の地質調査・試料採取を実施した。(1)に挙げた鉱物に対して、(独)産業技術総合研究所設置電子プローブマイクロアナライザー(EMPA-WDS)とレーザーICP-MSを用いて、上述の鉱物の正確な希土類含有量を決定した。その結果として、有望な希土類鉱床であるキパワ鉱山では、これまでユージアル石が主要な希土類鉱石と考えられてきたがユージアル石には、総REE量が最大でも2wt%程度しか含有されておらず、主要な希土類鉱石はモサンドライトであることが本研究により新たに判明した。さらに、平成25年7月6日-10日の日程で、Mendel大学のJindrich Kynicky准教授と共同でモンゴルKhan Bogdアルカリ岩鉱床の地質調査を実施し、本鉱床の重要な希土類鉱石であるエルピダイトを多量に含む鉱石を採取した。資源量評価に必要なエルピダイトの分布状況について詳細に記載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、HREE含有難溶性鉱物を実用的な資源として利用することを目指して、難溶性鉱物の化学組成分析と結晶性の評価を行い、これらの鉱物学的情報と、溶媒の種類・温度・濃度を変化させたHREE抽出実験の結果を合わせて、HREE資源として利用可能な難溶性鉱物の資源評価法を提案することを研究の目的とする。そこで、平成25年度は、(1)カナダのNechalacho鉱床、Kipawa鉱床、サウジアラビアのJabal Hamula、モンゴルのKhan Bogd鉱山に産出する形成条件の異なるジルコン、フェルグソン石、エルピダイト、ユージアル石、モサンドライトに含まれるHREEの含有量の決定と(2)モンゴルKhan Bogdアルカリ岩鉱床の地質調査・試料採取を実施することを計画していた。平成25年度は、ほぼ計画どおりに進んでおり、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度から平成27年度にかけて、(1)ジルコン、フェルグソン石、エルピダイト、ユージアル石、モサンドライトの結晶性の評価、(2)ジルコン、フェルグソン石、エルピダイト、ユージアル石、モサンドライトからのHREE抽出実験の実施、(3)重希土類資源として最適な難溶性鉱物の資源評価法の開発を実施する。 具体的には、各地のアルカリ岩試料から、上述の鉱物を磁選機やハンドピックで分離し、粉末試料を作成する。それらの試料に対して、粉末X線回折装置(リガク製SmartLab)を用いて、上述鉱物の結晶性(結晶構造の壊れている程度)を明らかにする。結晶性が低下すると粉末X線回折スペクトルの半値幅が増加する現象を利用して、各鉱物の結晶性の評価には、強度の強いスペクトル3本を選び、その半値幅の平均値で評価する。粉末試料に対しては、各鉱物の平均組成を出すため、ICM-MSを用いて、化学分析を行う。化学組成と結晶性の評価された上述鉱物の粉末を用い、HREEの抽出実験を行う。抽出実験は、Hoshino et al. (2012)において、ジルコンからのHREE抽出実験に用いた高温分解容器を使用して、1M、2M、3M、4M、5M、6Mの塩酸、硫酸により、室温、50℃、100℃、200℃、250℃の各温度条件で行う。また、抽出時間も10h-100hまで10時間刻みで変化させ実施する。得られた抽出液はICP-MS分析装置を用いて測定し、各条件でのHREEの抽出量を決定する。これにより、各難溶性鉱物の最適なHREEの抽出条件を決定する。これらの結果をまとめて、各難溶性鉱物のHREE含有量と結晶性の関係を明らかにし、HREE資源として利用可能な難溶性鉱物の資源評価法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にモンゴルのハンボグド鉱山で採集した鉱石の全岩化学分析を約30万円見込んでいたが鉱石の処理が遅れてしまい、次年度に繰り越しました。 昨年で行うことのできなかった鉱石の全岩化学分析のための試料準備も終えており、本年度に計画通り行うことができます。
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Research Products
(14 results)