2013 Fiscal Year Research-status Report
視認性の低い形態情報の顕著化:マンモグラフィ画像における病変領域の検出
Project/Area Number |
25871217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
木森 義隆 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター), 新分野創成センター, 特任助教 (10585277)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医用画像処理 / mathematical morphology / 画像情報学 |
Research Abstract |
本研究は,マンモグラフィ画像診断において,医師の読影負担の軽減と診断能の向上を実現し得る画像処理技術要素を開発することを目的としている.研究期間内での研究課題を,1. 乳房辺縁領域の自動抽出手法の開発,2. 腫瘤領域,石灰化領域,乳腺構築等の形態特徴の抽出手法の開発,3. 病変領域の自動検出手法の開発,4. 病変等の形態情報を容易に把握できるような描出手法の開発,の4項目に分けた.このうち当該年度は,1および2の課題を遂行した.課題2の成果は論文として報告した 1. 乳房辺縁領域の自動抽出手法の開発:背景から,乳房領域のみを切り出すことは,病変部位の探索領域を限定するために必須の処理である.また,乳房形状の変形(皮膚陥没や皮厚による異常)を検知することは,がんを認識するために重要である.このような処理の成否は,乳房辺縁領域(乳房の輪郭,Skin-line)の抽出精度に直接依存する.しかし,コントラストの低下,輝度の不均一な背景などの悪条件により,その抽出は困難なものになっている.そこで,本課題では,従来の理論を拡張した独自の画像処理演算(Rotational Morphological Processing,以降RMP)に基づく形態特徴強調フィルタを用い,乳房辺縁領域を強調し,自動閾値法によりセグメンテーションする手法を開発した.これにより,乳房の輪郭線および,乳頭の位置の正確な抽出が可能になった. 2. 腫瘤領域,石灰化領域,乳腺構築等の形態特徴の抽出手法の開発:本研究項目では,RMPに基づく,形態情報の抽出手法を拡張することにより,腫瘤領域等の病変領域の構造特徴を強調・抽出手法を確立した.病変領域の形態パターンに最適なフィルタを設計するため,構造パラメータの形状,大きさ等の最適化を検討した.本研究成果は,J. Synchrotron Rad.誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,「乳房辺縁領域の自動抽出手法の開発」ならびに,「腫瘤領域,石灰化領域,乳腺構築等の形態特徴の抽出手法の開発」を研究開発課題として遂行した.その結果,RMPに基づく,新規の画像処理アルゴリズムを複数考案し,その一部を論文として発表することができた.本手法によって,複雑な背景から病変領域のみの強調や,形態の異なる病変領域の強調など,病変領域の大きさ,濃淡値において,目視では検出困難な病変領域の顕著化を実現することが可能となった.また乳房辺縁領域の自動抽出手法に関しては,アーチファクトやノイズが乳房辺縁領域近傍に存在する場合は,それらの除去に対する処置として,RMPに基づく平滑化,領域分割手法などを組み合わせた多段階処理のアルゴリズムを設計した.現在,本手法を約300枚のテストデータに適用し,手法の頑健性,汎用性を評価しているところである.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに開発した画像処理結果を基にして,次の2つの研究課題:「病変領域の自動検出手法の開発」および,「病変等の形態情報を容易に把握できるような描出手法の開発」に取り組んでいく.まずは,RMPに基づく,形態情報の抽出手法を用いて,スピキュラおよび,それを中心とした乳腺構築の乱れ等の病変領域を顕著化し,自動検出する手法の開発を遂行する.次に,他の研究課題の結果(抽出された乳房の形態特徴や,検出した複数の病変領域等)を統合し,その位置や空間的な関係を一目して把握し得る,効果的な形態情報の描出手法を開発する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,大量の画像データに対し開発手法の評価を行う予定であったが,対応可能な性能を持つ計算機の発売が大幅に遅れた.このため,評価結果のシンポジウムでの発表や開発プログラムのGUI作成等に対するソフトウェアハウスへのアウトソーシングの予定を変更し,先に,病変等の検出に関し,想定より困難な条件に対する画像処理アルゴリズムの開発を行い,手法全体に関する評価は平成26年3月から開始した. なお,平成25年度内に納品されたものの,支払いが平成26年度となった物品については,所属機関の会計処理の都合上,平成25年度収支状況報告書には計上されない(平成26年度収支状況報告書に計上される).大規模画像処理用の計算機については,上述の理由により平成25年度収支状況報告書に記載が無いが,平成26年3月にすでに導入を済ませており,これを利用して開発手法の評価に着手している. 未使用金額については,平成26年3月から進めている開発手法の評価,シンポジウム等での結果報告,またその結果をもとにGUIが整備された画像処理ツール作成をアウトソーシングするための経費に充てる.
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