2013 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺癌におけるEGFR-TKI治療耐性化後の転移に関する新規分子機序の解明
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25871225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
芹澤 昌邦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 任期付研究員 (00569915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | EGFR-TKI耐性 / 非小細胞肺癌 / 細胞遊走 / TGF-β / PPARγ / CRKL |
Research Abstract |
本年度は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)耐性非小細胞肺癌細胞株であるPC-9ER細胞における、「EGFR-TKI耐性機構」およびPC-9ER細胞が示す細胞遊走能の亢進の原因である「TGF-β2の転写量の増加」に関与する遺伝子異常の探索を目的に本研究を行った。 Comparative Genomic Hybridization解析により、PC-9ER細胞と親株であるPC-9細胞間の遺伝子コピー数の比較を行うことで、耐性化に伴って生じたコピー数異常の探索を行った結果、PC-9ER細胞の13箇所のゲノム領域においてコピー数異常が検出された。次にコピー数増加が検出された領域内の167遺伝子から、慢性骨髄性白血病の原因となるBCR-ABLキナーゼの主要な基質分子であるCRKLに注目し解析を行った。PC-9ER細胞におけるCRKLのコピー数は約6倍に増加しており、それに伴うCRKLタンパクの発現上昇も確認された。また、PC-9ER細胞において恒常的な活性化を示し、EGFR-TKI耐性にも関与すると考えられるPI3K-AKTシグナルの上流にCRKLは位置している。そこでPI3K/mTOR阻害剤を用いPI3K-AKTシグナルを阻害した結果、PC-9ER細胞の増殖は顕著に抑制された。以上の結果は、CRKLのコピー数の増加がPC-9ER細胞のEGFR-TKI耐性に関与している可能性を示唆しているものと考えられる。また、CRKLは細胞遊走能およびTGF-βシグナル伝達系との関連性も報告されており、PC-9ER細胞におけるCRKLのコピー数増加と細胞遊走能の亢進との関連性について今後検討を行う必要がある。一方で、PC-9ER細胞のTGF-β2の遺伝子領域において、コピー数異常は認められなかった。TGF-β2の転写量の増加には、他の種類の遺伝子異常が関与している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、本研究で使用しているEGFR-TKI耐性細胞株PC-9ER細胞の耐性機構が、CRKL遺伝子のコピー数増加に起因する可能性が高いことを明らかにし、この成果を英文誌へ発表することができた。また、CRKLは細胞遊走能の亢進およびTGF-βシグナル伝達系との関連性も指摘されている分子であり、PC-9ER細胞が示す細胞遊走能の亢進との関連性という点で、次年度さらなる解析が必要である。そのため「非小細胞肺癌におけるEGFR-TKI治療耐性化後の転移に関する新規分子機序の解明」を目的とする本研究課題において、新たな解析対象となる分子を抽出できたことは意味がある成果と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の研究で見出したCRKLを新たな解析対象とし、PC-9ER細胞におけるCRKLのコピー数増加と細胞遊走能の亢進との関連性について分子生物学的検討を行う。PC-9ER細胞が示す細胞遊走能の亢進に関与する他の遺伝子異常については、次世代シーケンサーを用いてPC-9ER細胞と親株であるPC-9細胞の全ゲノム解析を行い、両配列情報を比較することで検出する。これにより、TGF-β2の転写量の増加に関与する遺伝子異常の探索も行うことが出来ると考えている。また、臨床検体を用いた検討として、当院のEGFR-TKI非奏功症例の診断時を含むEGFR-TKI治療前のFFPEサンプルを利用し、TGF-β2およびSmad2の発現強度および発現頻度、そしてSmad2の活性化状態について免疫染色による評価を行い、転移の有無および予後との関連性について検討を行う。これによりTGF-β2およびSmad2が、EGFR-TKI治療耐性化後の転移予測または予後に関する予測バイオマーカーになり得るか検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究を進めていく中で、EGFR-TKI耐性化に伴い生じた遺伝子異常を、PC-9ER 細胞のゲノム全体を対象として探索することが、PC-9ER細胞が示す細胞遊走能の亢進に関与する新たなメカニズムを見つけ出すうえで有用である可能性が高いと判断した。所属する施設において、次年度より全ゲノム解析が可能な次世代シーケンサーの設備が完備されることが明らかになった。そこで、PC-9ER細胞と親株であるPC-9細胞の全ゲノム解析を行い、両配列情報を比較する研究を次年度に行うことにした。この研究については、当初より予定していた臨床検体を用いた研究とともに並行し進める必要がある上に、高額な試薬類が必要となるため、次年度への研究費の配分を増やした研究計画に変更した。 ゲノム解析に必要な試薬類および機器類の購入に使用すると共に、臨床検体を用いた研究に必要な抗体など免疫染色に必要な試薬類の購入を行う。
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