2014 Fiscal Year Annual Research Report
非小細胞肺癌におけるEGFR-TKI治療耐性化後の転移に関する新規分子機序の解明
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25871225
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
芹澤 昌邦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (00569915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | EGFR-TKI耐性 / 細胞遊走能 |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)エルロチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株であるPC-9ER細胞の耐性機序、そしてPC-9ER細胞が示す「耐性化に伴う細胞遊走能の亢進」に関与する分子機序の解明を目的に、オミクス解析手法を用いた検討を行った。 エルロチニブは、標的分子であるEGFRの活性阻害に加えて、酸化ストレスの誘導による薬理効果を示すことが報告されている。そこで、PC-9ER細胞が酸化ストレスへの耐性機序を有するか検討するために、遺伝子コピー数解析と、メタボローム解析による細胞内代謝物濃度測定を併せたマルチオミクス解析を行った。PC-9ER細胞では、グルタミン代謝関連遺伝子の発現亢進に関わるMYCおよびグルタチオンからグルタミン酸の再合成に関わる3遺伝子のコピー数の増加により、グルタミン代謝経路全体の活性化が起きており、その結果としてグルタミンより合成されるグルタチオンによる抗酸化能が亢進している可能性があることを明らかにした。 次に、次世代シーケンサーを用いてPC-9ER細胞と親株であるPC-9細胞の全エキソン解析を行い、PC-9ER細胞特異的変異の探索を行った。その結果、509遺伝子の1,007箇所においてPC-9ER細胞特異的な変異が検出された。その中には、グルタチオン代謝に関連する6遺伝子上の変異が含まれており、これら変異が上記のグルタミン代謝関連遺伝子のコピー数増加と併せてPC-9ER細胞の抗酸化能の亢進に関連していると考えられる。また、13種類の細胞遊走関連遺伝子においてPC-9ER細胞特異的変異が認められており、これら変異とPC-9ER細胞の示す細胞遊走能の亢進との関連性について今後解析を行う。 2年間の本研究により、EGFR-TKI耐性化に伴う細胞遊走能の亢進を含む分子生物学的特性の変化に関係する新たな分子生物学的知見を得ることができた。これら結果に基づき、EGFR-TKI耐性化と転移との関連性についてさらなる検討を継続し進めていく。
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