2013 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化誘導型体内バイオプロセスに基づく栄養血管網を有する重厚心筋組織体の開発
Project/Area Number |
25871234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岩井 良輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (60611481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心筋移植 / 生体内組織形成 / 細胞移植 / バイオプロセス / 組織工学 |
Research Abstract |
心臓移植に代わり得る重症心不全の次世代再生治療法として培養心筋体の移植が有望視されているが、細胞の3次元組織化により内部への酸素・栄養供給が不足し壊死が生じるため、いかにして組織体へ栄養血管構造を付与するかがその実現のための重要課題となっている。一方、我々は多孔性の鋳型基材に細胞を充填し皮下に埋入するだけで、生体内においてこれらの細胞が基材周囲を被覆する結合組織と一体となって自然成長することで発達した毛細血管網を有する「生きた」移植用組織体を鋳型にそった所望の形状で得られる新規の体内バイオプロセスの開発に成功している。また、培養表面で内皮細胞からなる3次元細胞凝集体や毛細血管様の網目状細胞構造体を作製できる細胞の自己集合誘導ポリマー(sPIC)も開発している。本研究では、このような生体内バイオプロセスや細胞の自己集合化技術を応用することで、栄養血管網や導管血管構造を有する重厚な心筋様組織体を作製し心臓再生医療に供することを目的とした。 先ずは、円筒形の多孔性アクリル材を鋳型基材として作製し、その内部に血管新生作用のある脂肪由来血管間質細胞(ADSCs)を、外周囲にマトリゲルに懸濁した心筋細胞を塗布しラットの皮下に埋入した。埋入4週後、鋳型周囲は約0.5 mm程度の組織で完全に被覆され、鋳型を引き抜くと管状の組織体が得られた。組織分析の結果、得られた管状組織体の壁面は毛細血管網が張り巡らされた約200~300 μmの心筋様組織の層構造からなることが分かった。 一方で、sPICをコートした培養皿上に心筋細胞とADSCの混合懸濁液を播種することで、心筋細胞とADSCsからなる拍動性を有する細胞凝集体や網目状構造体が作製できた。このような血管新生を促進する細胞と心筋細胞が一体となった細胞凝集体を上述の鋳型基材と組み合わせることで心筋細胞の生存率が高まり、より厚い心筋組織体の構築が可能となると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、心筋細胞と多孔性鋳型基材を組み合わせた体内バイオプロセスにより、毛細血管網を有する管状の心筋様組織体を作製することに成功した。このような管状の心筋組織体はそれ自身を導管血管として利用できる。従って、冠動脈と連結すれば毛細血管網を介して移植直後から組織深部の心筋細胞へも血流が供給されるため、移植体の高い生着率と続く心機能の回復が得られると期待される。 一方で、さらに重厚な心筋組織体を構築するためのツールとして、血管新生を促進する細胞(ADSCs)と心筋細胞とが一体となった3次元細胞凝集体や毛細血管様の網目状細胞構造体を単に培養皿に細胞を播種するだけで作製することにも成功した。 以上より、栄養血管網や導管血管構造を有する重厚な心筋組織体を作製するための予備的検討に重点を置いた当該年度の目的は概ね達したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られている心筋様組織体については、より詳しい組織学的分析に加えて、力学的強度や心筋組織としての電気生理学的な特性を調べる必要がある。同時に、得られた心筋組織体の心筋梗塞モデル動物への移植実験を行い心機能回復に対する有効性を評価するとともに、移植結果からより有効な心筋組織体の形状を考察、その作製のための鋳型の設計を行う。 一方で、心筋細胞とADSCsが一体となった3次元凝集体や網目状構造体を様々な形状の鋳型基材と組み合わせて皮下埋入することで、生体心筋に匹敵するような重厚な心筋組織体の作製を試みることも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が目的試薬(培養血清)を購入するのに不足していたため。 次年度の交付金に加えて目的試薬(培養血清)を購入する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] 培養で形を作る2014
Author(s)
岩井良輔、春木涼多、根本泰、中山泰秀
Organizer
第8回生体再生技術研究会
Place of Presentation
大阪・アメニティ江坂
Year and Date
20140411-20140411
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