2013 Fiscal Year Research-status Report
アンチセンス核酸医薬における脂質分子のコンジュゲート・ルールの確立
Project/Area Number |
25871235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
和田 俊輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (40631297)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アンチセンス核酸 / コレステロールコンジュゲート / リンカー / BNA |
Research Abstract |
申請者はまず、コレステロールコンジュゲートのリンカーとしてTirethyleneglycol (TEG)、Hemisuccinate (HMS)、TEG_C6-disulfide (TEG_C6SS)、TEG-5’-amino-BNA (TEG_5A)を用意し、PCSK9標的型LNAアンチセンス核酸の3’及び5’末端にコレステロールを結合させた。3’及び5’末端によらず、TEG体とHMS体で非コンジュゲート体に比べ薬効の大幅な改善が確認された。しかし、薬効であるPCSK9 mRNAの抑制率は3’末端修飾のほう(TEG体: 60%、HMS体:40%)が5’末端修飾(TEG体: 40%、HMS体:20%)よりも高い結果であった。他のリンカーを使用した場合、3’及び5’末端によらず薬効の改善は確認されなかった。ELISAで肝臓移行量を評価するとHMS体が最も肝臓移行量が多く、次いでTEG_C6SS体、TEG体、TEG_5A体の順であった。5’末端と3’末端修飾では3’末端にコレステロールをコンジュゲートさせたLNA-AONの方が肝臓への移行性が高いこと明らかとなった。より詳細に3’コンジュゲート体が肝臓のどの細胞に移行しているのかをFISH法を用いて評価すると、肝実質細胞への移行量は各コンジュゲート体の肝臓移行量と相関せず、リンカーの細胞指向性が明らかとなった。 高濃度でコレステロール修飾型アンチセンス核酸(6 μmol/kg)を静脈投与するとTEG体とHMS体で致死性の毒性が確認された。詳細に解析を行うと、高濃度条件下(600 μM以上)ではコレステロールコンジュゲート型アンチセンス核酸がミセル様の構造体を形成しており、リンカーの種類によっては血小板と相互作用し播種性血管内凝固症候群様の症状を起こすことが明らかとなった。高用量で投与する際、皮下投与を行うことで上記の症状は回避することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにPCSK9標的型アンチセンス核酸におけるコレステロールコンジュゲートリンカーの最適化は順調に進行しており、TEGとHMSが有力候補として考えられる。また、リンカーの化学がアンチセンス核酸の肝臓移行性や細胞指向性に大きく関与していることが明らかとなり、リンカーの設計指針に関する知見が得られている。毒性面の評価においては、免疫応答性や肝毒性、腎毒性を中心に評価しているが、2 μmol/kgの用量において毒性的な変化は確認されなかった。しかし、高濃度での静脈投与は致死性の毒性に繋がることが明らかとなり、投与経路の最適化をすることができた。また、死に至る原因は既に解明しており、今後の検討項目に加えることができている。 また、既に2年目に行う予定である、標的遺伝子をApolipoprotein Bに変えて、各コレステロールコンジュゲート体の評価を終えており、概ね順調に研究が進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、標的をApolipoprotein B (ApoB)に変えて評価した際に、PCSK9のときとは異なる結果を得ている。TEGリンカーはPCSK9を標的とした場合、有意にPCSK9 mRNAの抑制効果を改善したがApoBでは非コンジュゲート体に比べて薬効を落としてしまう結果となっている。HMS体も同様にApoBで薬効の改善は確認されず、非コンジュゲート体と同程度の抑制率であった。各コレステロールコンジュゲート体の肝臓移行量の傾向はPCSK9のときと同様であった。これらのことから、標的遺伝子が異なる場合、再度、リンカーの選定が必要となっているため、さらにPCSK9及びApoBを標的としたアンチセンス核酸を用いて、両者で有効であるリンカーの最適化を行う必要性がある。 今後さらに数種類のリンカーを作製し、PCSK9及びApoBを標的とするコレステロールコンジュゲート型アンチセンス核酸で評価を行う。また、TEGリンカーに関しても、そのエチレングリコール鎖の長さを検討する。その後、脂質分子の最適化をトコフェロール、コレステロール、ステアリン酸で行う。この際、標的遺伝子にPCSK9とApoBを選択し、両者で同様に薬効を改善し得るコンジュゲート化合物を選定する。その後は研究計画に沿って研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンチセンスオリゴヌクレオチドや評価に使用する高額な試薬や物品を、当初予定していた定価よりも安価に購入することができたため。 今年度はアンチセンスオリゴヌクレオチドを大量に必要とするので、その合成費用に多くを使用する予定である。また、リアルタイムPCRに必要な酵素やFISHに使用するLNAプローブなどは非常に高額であるため、次年度使用研究費より購入する。
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