2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌高転移性細胞株を用いたリン酸化プロテオーム解析による微小転移マーカーの開発
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25871240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
白水 崇 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (00582678)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 転移 / プロテオミクス / バイオマーカー |
Research Abstract |
【研究の目的】 大腸癌の診断や治療においては、周辺組織への浸潤や遠隔臓器への転移の問題が大きく、とりわけ癌微小転移判定マーカーの開発は急務である。癌遺伝子の多くはキナーゼであり、転移の分子メカニズムにもリン酸化シグナルは大きく関わることから、リン酸化タンパク質は重要なバイオマーカー候補である。そこで本研究では、マウス同所移植モデルにより大腸癌高転移性細胞株を樹立し、リン酸化プロテオーム解析による大腸癌転移マーカー候補の探索と機能解析を行う。また同定したバイオマーカー候補については、SRM/MRM法により多検体を用いてハイスループットな検証を行う。本研究により、有用な大腸癌微小転移マーカーや創薬標的の発見が期待できる。 【25年度の成果】 GFP安定発現株(HCT-116-GFP)の免疫不全マウスへの同所移植(GFPメタマウスモデル)により、高転移性株を樹立した。樹立した細胞株はin-vitroでの浸潤能試験(Matrigel invasion assay)により、高浸潤性である事を確認した。さらに、樹立した高転移性株を用いて、iTRAQ法によるリン酸化プロテオーム解析を行った。タンパク質の消化はFASP法(Filter Aided Sample Preparation)により行い、リン酸化ペプチドの濃縮はIMAC法(Immobilized Metal-ion Affinity Chromatography)により行った。iTRAQラベルしたリン酸化ペプチドを逆相クロマトグラフィーにより分画し、質量分析器(LTQ Orbitrap Velos)により解析を行った結果、16541のリン酸化ペプチド(4918タンパク質)を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度研究実施計画に記した2つの項目毎の達成度について以下に示す。 ①同所移植モデルでの高転移性株の樹立:高転移性ヒト大腸癌細胞株の樹立を、HCT-116のGFP安定発現株の免疫不全マウスへの同所移植により行った。樹立した培養細胞株はin-vitro浸潤能試験によりスクリーニングを行い、高浸潤性株をクローニングすることができた。 ②大規模リン酸化プロテオーム解析によるバイオマーカー候補の探索:樹立したHCT116高転移性株を用いて、大規模リン酸化プロテオーム解析を行った。タンパク質の抽出法および消化法の最適化を検討し、IMAC法によるリン酸化ペプチド濃縮を行った後、サンプルを逆相カラムで分画して質量分析器で解析をした。同定結果からターゲット分子を絞り込むためにバイオインフォマティクスによる解析を行った。IPAパスウェイ解析およびNetworKINによるキナーゼ探索を行い、リン酸化シグナルの変化予測からターゲット候補分子を選択した。 以上、計画していた項目についてはすべて達成できたので、概ね予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
SRM/MRM法による検証:ターゲット候補分子については、臨床検体でのリン酸化量の変化をSRM/MRM法により評価する。SRM/MRMでは三連四重極型質量解析計(TSQ Vantage, Thermo)により、特定の質量の親イオンを選択的に検出できるため、複雑な臨床検体サンプル内から目的とするタンパク質由来のペプチドを高感度に検出することができる。また、多検体での検証をハイスループットに行うことが可能である。 リン酸化の機能解析:検証されたバイオマーカー候補のリン酸タンパク質については、転移との関連について機能解析を行う。具体的には、リン酸化部位特異的抗体での免疫染色による細胞/組織内での局在の観察、およびリン酸化部位に変異を加えた遺伝子の培養細胞への導入実験を行う。変異遺伝子を導入した培養細胞に対しては、細胞増殖能の変化の観察、浸潤、転移能への影響についてmigration assayやmatrigel invasion assayを行う。
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Research Products
(2 results)